農学生命科学科

研究成果

2026.05.22動物機能学研究室の研究成果を国際学術雑誌「The Journal of Physiology」に発表

食後の「体熱産生・代謝亢進」のスイッチを入れる神経回路を解明

〜食後の腸ホルモンによる内臓感覚→脳→交感神経を介した褐色脂肪の活性化〜

 

京都府立大学大学院生命環境科学研究科動物機能学研究室の岩﨑有作(教授)、増田雄太(特任助教)、川瀬みゆき(大学院生)、そして、金沢医科大学生理学Ⅱの谷田守(准教授)を中心とする研究グループは、食後に分泌される消化管ホルモンCCK(コレシストキニン)の体熱産生作用と腸・脳・褐色脂肪組織連関を介した作用機序を明らかにしました。

 

発表のポイント

現代社会において増加する肥満や生活習慣病は、深刻な課題となっています。これらの解決の1つに、エネルギー代謝を亢進させることの重要性が挙げられます。食事には、栄養素の消化・吸収・代謝のための代謝上昇作用、すなわち、「食事誘発性熱産生(DIT)」が存在します。より効率的に DIT を高めることができれば、肥満や生活習慣病の対策につながります。

DIT が駆動する機序には、栄養素の消化・吸収・代謝に由来する作用以外の関与も示唆されています。食後には腸ホルモンのコレシストキニン(CCK)が分泌されます。この CCK が熱産生に関わることは知られていましたが、それがどのような生理学的な機序を経て熱産生を誘導しているのか、そのメカニズムは不明でした。

 

  1. 内臓感覚神経がセンサーとして作動: 投与されたCCKが、腸と脳を繋ぐ「内臓感覚神経:迷走感覚神経」に発現するCCK-A受容体に作用し、迷走感覚神経由来の電気信号が脳へと送られました。
  2. 脳内の「オキシトシン神経」が中継役: 迷走感覚神経からの信号は、脳の視床下部室傍核にある「オキシトシン神経」を活性化し、オキシトシン神経は延髄縫線核神経に作用し、交感神経系へ信号を送りました。
  3. 褐色脂肪細胞での熱産生: 褐色脂肪組織(BAT)を支配する交感神経の活性化によって、BATの脂肪燃焼が上昇し、体温とエネルギー消費が増加しました。

 

今回の発見は、私たちが日常的に経験する「食事による代謝亢進」の背後にある精密な制御機構の一端を明らかにしたものです。今後は、この体熱産生システムを効果的に刺激する食品成分や治療法を探索することで、健康寿命の延伸や生活習慣病の克服に寄与することが期待されます。

 

発見の概要図

本研究成果は、1878年創刊の生理学分野を代表する英国の権威ある学術雑誌「The Journal of Physiology」に掲載されます。まずは先行して、2026年5月13日10時(日本時間)にオンライン掲載されました。

 

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論文はこちら

https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1113/JP290717

 

論文情報

論文名:Peripheral cholecystokinin promotes thermogenesis via vagal afferent signaling, hypothalamic oxytocin, and sympathetic outflow to brown adipose tissue (末梢性コレシストキニンは、迷走神経求心性シグナル伝達、視床下部オキシトシン、および褐色脂肪組織への交感神経出力を介して熱産生を促進する)

著者:増田雄太*、川瀬みゆき*、北野里佳、大林健人、和田(矢部)俊樹、井上啓、谷田守†、岩﨑有作†(*共同筆頭著者、†代表著者)

雑誌名:The Journal of Physiology, 号数とページは後日決定, (2026)

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