近年の気候変動によって,従来はみられなかった病虫害の発生や果実品質の低下が大きな問題となっています.異なる種を掛け合わせる育種方法(種間交雑)は遺伝的多様性を各段に向上させ,種を越えた形質のやり取りを可能にすることから,画期的な新品種を生み出す可能性を秘めています.種間雑種の作出のためには,交雑親和性(どの組み合わせで交雑が成立するか)の解明が重要です.
本学科の森本拓也講師(果樹園芸学研究室)と板井章浩教授(資源植物学研究室)らの研究チームは,リンゴやナシといった多くの果樹が含まれるバラ科リンゴ連を対象として網羅的な交雑試験を行うことで,雑種作出が可能な組み合わせを見出しました.現在は,実際に作出した雑種個体の特性を表現型だけでなく,ゲノム・トランスクリプトームの面から調査しており,本研究の成果は,新しい特性を持った新規果樹の作出の基盤情報となると期待されます.
<論文情報>Takuya Morimoto, Yunosuke Matsuda, Ryo Sekiguchi, Akihiro Itai (2023) Comprehensive Assessment of Intergeneric Cross-compatibility of Six Fruit Tree Species in the Tribe Maleae (Rosaceae) Based on in vivo Pollen Tube Growth and Field Pollination
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hortj/advpub/0/advpub_UTD-383/_article/-char/ja
「花粉管伸長の観察および圃場での受粉試験にもとづく6種のバラ科リンゴ連果樹の属間交雑和合性の調査」
京都府立大学、名古屋大学、京都産業大学、熊本大学の共同研究グループは、植物の花において、花びらができる位置を決定する位置情報伝達システムを発見しました。
花びら(花弁)は、がく片とがく片の間(がく片境界部)の少し内側にできますが、どのようなメカニズムで花弁ができる位置が決定しているかは不明でした。
本研究では、がく片境界部で働くPTL遺伝子に着目し、PTL遺伝子がUFO遺伝子の働きを介して花弁原基形成を担うことを示しました。
花器官の配置は、花粉を運ぶポリネーターにとって、また花のかたちの観賞価値を高めるために重要です。
本研究成果は、花弁の位置情報伝達システムを解明したことに加え、花の形を改変する技術につながる可能性があります。
プレスリリース原稿はこちら
【論文情報】
本研究成果は、国際学術誌「Development」に、令和4年8月11日に掲載されました。
論文タイトル:Non-cell-autonomous regulation of petal initiation in Arabidopsis thaliana.
著者:Seiji Takeda, Yuki Hamamura, Tomoaki Sakamoto, Seisuke Kimura, Mitsuhiro Aida, Tetsuya Higashiyama
2022年6月10日(金)から2022年6月12日(日)に神戸ポートピアホテル及び武庫川女子大学にて開催された「第76回 日本栄養・食糧学会大会」において、動物機能学研究室所属の大学院生 武藤明日香さんが学生優秀発表賞を受賞しました。
受賞者
武藤 明日香(京都府立大学大学院 生命環境科学研究科 博士前期課程2年)
受賞題目
「腸ホルモンGLP-1の感覚神経・脳・副腎交感神経反射を介したアドレナリン分泌促進による体熱産生作用」
詳細は学会ホームページに掲載予定です。
日本栄養·食糧学会website
GABAは食後の内臓感覚神経活性化を増強し、満腹感を誘導し、食べ過ぎを予防する
γ-アミノ酪酸 (GABA、ギャバ) は神経伝達物質として生体内(脳)に多く存在する一方、食品(野菜、果物、発酵食品など)にも多く含まれます。食事由来のGABAは脳機能に影響を与え、不安低減や睡眠の質向上など有益な効果を有し、サプリメントや機能性食品として現在広く利用されています。しかし、摂取したGABAが脳に移行しないことは古くから知られており、GABAがどのように脳に作用しているか、そのメカニズムは不明でした。
今回、京都府立大学大学院生命環境科学研究科教授の岩﨑有作と大学院生の能美太一・大林健人を中心とするグループは、株式会社ファーマフーズとの共同研究で、以下を発見しました。
① 摂取したGABAは内臓感覚神経(求心性迷走神経)を介しての脳機能(満腹感誘導)に影響を与えることを発見しました。
② 食事は内臓感覚神経を活性化する作用を有し、GABAがこの食後内臓感覚神経活性化作用を増強することを発見しました。
③ ②の神経経路が満腹感増強という脳機能と連関し、食べ過ぎを予防することを発見しました。
本研究は、既にサプリメントや機能性食品として利用されているGABAの脳に作用する機序の一端を明らかにし、満腹感を誘導する新規作用も発見しました。今後、より詳細な機序が解明されることで、科学的根拠に基づいた機能性食品として、GABAが多くの人々の健康維持・増進に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2022年6月24日にスイスの学術雑誌「Nutrients」誌に掲載されました。
【概要図】
GABAは食事と摂取することで求心性迷走神経活性化を増強し、満腹感を増強、食べ過ぎを予防する
【論文情報】
論文名: Dietary gamma-aminobutyric acid (GABA) induces satiation by enhancing the postprandial activation of vagal afferent nerves.
著者: Utano Nakamura†, Taichi Nohmi†, Riho Sagane, Jun Hai, Kento Ohbayashi, Maiko Miyazaki, Atsushi Yamatsu, Mujo Kim, Yusaku Iwasaki*(†共同筆頭著者、*代表著者)
雑誌名: Nutrients, 14, 2492 (2022)
https://doi.org/10.3390/nu14122492
【プレスリリース(研究概略の原稿)】
分子栄養学研究室 亀井教授が、日本栄養・食糧学会の学会賞を授賞しました。
本学生命環境科学研究科 分子栄養学研究室の大学院生が、令和4年(2022)年3月15日(火)〜18日(金)にオンラインにおいて開催された日本農芸化学会2022年度大会 2022年度産学官学術交流フォーラムにおける「第2回夢にチャレンジ企画賞」において優秀賞を受賞しましたので、下記のとおり報告いたします。
本企画賞では、社会貢献の視野、そして自由な発想の具現化を望む学生及びポスドクの活動助成を目的として、選考通過者によるピッチプレゼンテーションが実施され、審査の結果、2名が優秀賞を受賞しました。
記
1 受賞者
大藪(おおやぶ) 葵(まもる)(生命環境科学研究科 大学院2回生)
2 受賞題目
「人生100年時代を迎えて寝たきりにならない社会を実現するために
〜筋タンパク質分解の活性化を遮断したマウスの解析から新規の生理活性物質「アトロカイン」を発見する〜」
3 受賞年月日
令和4年(2022)年3月18日(金)
(参考)学会HP:https://www.jsbba.or.jp
栄養が欠乏した時に身体が適応する反応の詳細が明らかになりました
令和4年1月24日
京都府立大学
京都府立大学大学院生命環境科学研究科分子栄養学研究室は、栄養が欠乏した時に身体が適応して筋肉で起こる反応の詳細(食べ物が手に入らない飢餓時に人体がどのように適応し生き残るかのメカニズム)を明らかにし、この内容が学術誌「FASEB Journal(米国実験生物学連合ジャーナル)」(電子版)に2022年1月21日付けにて掲載されました。
飽食の時代に至る以前、人類は何百万年にもわたって飢餓にさらされてきました。飢餓は深刻な危機であり、人体は適応する代謝能力を獲得してきました。飢餓や栄養摂取制限により生体内でどのような反応が生じるかということは、栄養学にとどまらず生物学上の重要な課題です。食べ物が得られない飢餓の時には人体はどのように対応するのでしょうか?人体で最も重要な器官である脳は糖質(グルコース)をエネルギー源としています。飢餓の時には、脂肪組織を分解したり、また身体の中で最も大きい組織である筋肉(体重の約40%)のタンパク質を分解して糖質を作り出して脳の機能を保つと考えられています。つまり飢餓時には筋肉が小さく萎縮します。飢餓時に筋肉で生じている反応を分子栄養学研究室では明らかにすることを試みました。
以前の研究で、飢餓などによる筋肉の萎縮時にFOXO1という遺伝子調節因子の量が筋肉で顕著に増加することを見つけました。そのためFOXO1を筋肉で人工的に過剰に発現する遺伝子改変マウスを作成したところ、筋タンパク質の分解が進み筋肉の萎縮が起こることを見つけています。今回、分子栄養学研究室はFOXO1(とその関連因子)を筋肉で欠損させる遺伝子改変マウスを新たに作成しました。そして、遺伝子改変マウスの筋肉で発現量が変化する遺伝子を、一度に数万個の変動を解析する方法(マイクロアレイ法)で探しました。その結果、飢餓時の筋肉ではFOXO1の制御下で、タンパク質分解の新たな分子、タンパク質合成を阻害する因子(食事由来のアミノ酸などのセンサー)、分岐鎖アミノ酸の輸送体、脂質分解に重要な酵素など、さまざまな機能分子が働いていることがわかりました。
この成果は、飢餓適応という生体にとって基本的な役割を明らかにした生物学的に重要な発見です。また筋肉の萎縮はさまざまな病気(がんや糖尿病)やギプス固定、加齢などで起きますが、筋肉の萎縮の予防・改善の重要な手がかりとなるものです。
【研究の概要】
発表のポイント
・骨格筋特異的にFOXO1を過剰発現したトランスジェニックマウスと骨格筋特異的にFOXO1、FOXO3a、FOXO4を欠損したノックアウトマウスを用いた解析から、飢餓時の骨格筋におけるFOXO1の新規標的遺伝子を網羅的に明らかにしました。
・具体的には、飢餓時の筋肉ではFOXO1の制御下で、タンパク質分解の新たな分子、タンパク質合成を阻害する因子(食事由来のロイシンやアルギニンなどのセンサー)、分岐鎖アミノ酸の輸送体、脂質分解に重要な酵素など、さまざまな機能分子が働いていることがわかりました。
・これらのモデルマウスを用いた解析などから、筋萎縮時の筋タンパク質分解活性化の新たな分子メカニズム(FOXO1-C/EBPδ軸)を発見しました。飢餓状態での骨格筋では、FOXO1がC/EBPδやATF4と協調して標的遺伝子の発現調節していることが示唆されました。
発表雑誌
<雑誌名>
FASEB Journal
<論文タイトル>
FOXO1 cooperates with C/EBPδ and ATF4 to regulate skeletal muscle atrophy transcriptional program during fasting
<著者>
Mamoru Oyabua, Kaho Takigawaa, Sako Mizutania, Yukino Hatazawaa, Mariko Fujitaa, Yuto Ohiraa, Takumi Sugimotoa, Osamu Suzukib, Kyoichiro Tsuchiyac, Takayoshi Suganamid, Yoshihiro Ogawae, Kengo Ishiharaf, Shinji Miurag, Yasutomi Kameia
a Kyoto Prefectural University, bNational Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition, cUniversity of Yamanashi, dNagoya University, eKyushu University, fRyukoku University, gUniversity of Shizuoka
<論文URL>
http://doi.org/10.1096/fj.202101385RR
【連絡・問合せ先】 京都府立大学大学院生命環境科学研究科
分子栄養学研究室 教授 亀井 康富
電話 075-703-5661 E-mail kamei[at]kpu.ac.jp
夏の花として親しまれているトレニアは、可愛らしい姿と育てやすさを兼ね備えた優れた園芸植物です。しかし、花の形や色のバリエーションが少ないため、地味な花という印象を持っておられる方も多いのではないでしょうか。本学科の西島隆明教授(野菜花卉園芸学研究室)らの研究チームでは、動く遺伝子「トランスポゾン」が活性化したトレニア「雀斑(そばかす)」の子孫から、花や葉の形や色が変化した様々な変異体を得て、新品種の育成を目指しています。
今回、「雀斑」の子孫から、明るい赤紫色の新しい花色を示す変異体を見出しましたが、残念なことに花弁が縮れてしまう欠点がありました。しかし、この変異体を、赤紫色の色素であるアントシアニンの生合成が抑制された別の変異体と交雑すると、花弁が赤紫色を保ったまま正常に発達することが明らかになりました。新しい花色が花弁に障害を起こす例は他の花でも知られており、今後、研究成果が花色の育種に広く役立つことが期待されます。
<論文情報>
Nishijima, T., N. Tanikawa, N. Noda, M. Nakayama. 2022. A torenia mutant bearing shrunken reddish-purple flower and its potential for breeding. Hort. J. 91: 104-111.
古代より五穀のひとつに数えられるアワは、日本の文化と密接な関係があります。古くは中国の古代文明の主食であったとされ、近代以前はアジアやヨーロッパで穀物として人類を支えてきました。アワがどこからどのように広がったのかということは我々人類の歴史をたどるという意味でも重要です。また、さまざまな環境に適応し、人が栽培することにより形態的にもきわめて多様であり、作物がどのように多様化し分布を広げてきたのかという進化生物学の研究上非常に興味深い材料です。
資源植物学研究室の大迫敬義准教授らのグループは、アワについて実験集団を構築し、次世代シークエンサーを用いた解析を行うことにより詳細な連鎖地図を作成しました。これを用いて形質の多様化や異なる環境条件への適応に関する候補遺伝子を同定しました。さらに、品種間や系統間の変異の解析を行い多様化の遺伝的基礎を明らかにしました。アワの分布の拡大や人為選抜による多様化の解明の手掛かりになる研究といえます。
本研究成果は,英国の国際誌「Scientific Reports」(電子版)2022年1月7日付(日本時間午後7時)に掲載されました。
プレスリリース原稿
https://www.kpu.ac.jp/cmsfiles/contents/0000008/8726/Jan.7.2022.pdf
論文情報
Kenji Fukunaga, Akira Abe, Yohei Mukainari, Kaho Komori, Keisuke Tanaka, Akari Fujihara, Hiroki Yaegashi, Michie Kobayashi, Kazue Ito, Takanori Ohsako, and Makoto Kawase (2022) Recombinant inbred lines and next-generation sequencing enable rapid identification of candidate genes involved in morphological and agronomic traits in foxtail millet. Scientific Reports 12: 218.
DOI 番号:10.1038/s41598-021-04012-1
2021年11月27日(土)にオンラインにて開催された「第60回 日本栄養・食糧学会 近畿支部大会」において、動物機能学研究室所属の大学院生 豊岡真悠さんが若手奨励賞を受賞しました。下記のとおり報告いたします。
なお、本大会における選考対象演題は17題であり、その中から4名が受賞しました。
受賞者
豊岡 真悠(京都府立大学大学院 生命環境科学研究科 博士前期課程1年)
受賞題目
「香辛料成分のTRPA1発現求心性迷走神経サブクラスを介した摂食亢進作用と中枢神経機序の解析」
関連Webサイト(日本栄養·食糧学会 近畿支部 website)
http://www.jsnfs-kinki.jp/taikai/wakate-shoureishou.shtml