農学生命科学科

研究成果 

2022.01.20 新しい花色による花弁の障害を回避する方法を発見(野菜花卉園芸学研究室)

夏の花として親しまれているトレニアは、可愛らしい姿と育てやすさを兼ね備えた優れた園芸植物です。しかし、花の形や色のバリエーションが少ないため、地味な花という印象を持っておられる方も多いのではないでしょうか。本学科の西島隆明教授(野菜花卉園芸学研究室)らの研究チームでは、動く遺伝子「トランスポゾン」が活性化したトレニア「雀斑(そばかす)」の子孫から、花や葉の形や色が変化した様々な変異体を得て、新品種の育成を目指しています。

 

今回、「雀斑」の子孫から、明るい赤紫色の新しい花色を示す変異体を見出しましたが、残念なことに花弁が縮れてしまう欠点がありました。しかし、この変異体を、赤紫色の色素であるアントシアニンの生合成が抑制された別の変異体と交雑すると、花弁が赤紫色を保ったまま正常に発達することが明らかになりました。新しい花色が花弁に障害を起こす例は他の花でも知られており、今後、研究成果が花色の育種に広く役立つことが期待されます。

 

<論文情報>

Nishijima, T., N. Tanikawa, N. Noda, M. Nakayama. 2022. A torenia mutant bearing shrunken reddish-purple flower and its potential for breeding. Hort. J. 91: 104-111.

DOI https://doi.org/10.2503/hortj.UTD-319

2022.01.11 雑穀・アワの多様化と分布拡大に関わる候補遺伝子を同定しました(資源植物学研究室)

古代より五穀のひとつに数えられるアワは、日本の文化と密接な関係があります。古くは中国の古代文明の主食であったとされ、近代以前はアジアやヨーロッパで穀物として人類を支えてきました。アワがどこからどのように広がったのかということは我々人類の歴史をたどるという意味でも重要です。また、さまざまな環境に適応し、人が栽培することにより形態的にもきわめて多様であり、作物がどのように多様化し分布を広げてきたのかという進化生物学の研究上非常に興味深い材料です。

 

資源植物学研究室の大迫敬義准教授らのグループは、アワについて実験集団を構築し、次世代シークエンサーを用いた解析を行うことにより詳細な連鎖地図を作成しました。これを用いて形質の多様化や異なる環境条件への適応に関する候補遺伝子を同定しました。さらに、品種間や系統間の変異の解析を行い多様化の遺伝的基礎を明らかにしました。アワの分布の拡大や人為選抜による多様化の解明の手掛かりになる研究といえます。

本研究成果は,英国の国際誌「Scientific Reports」(電子版)2022年1月7日付(日本時間午後7時)に掲載されました。

プレスリリース原稿

https://www.kpu.ac.jp/cmsfiles/contents/0000008/8726/Jan.7.2022.pdf

論文情報

Kenji Fukunaga, Akira Abe, Yohei Mukainari, Kaho Komori, Keisuke Tanaka, Akari Fujihara, Hiroki Yaegashi, Michie Kobayashi, Kazue Ito, Takanori Ohsako, and Makoto Kawase (2022) Recombinant inbred lines and next-generation sequencing enable rapid identification of candidate genes involved in morphological and agronomic traits in foxtail millet. Scientific Reports 12: 218.

DOI 番号:10.1038/s41598-021-04012-1

論文公開 URL: www.nature.com/articles/s41598-021-04012-1

2021.12.01 動物機能学研究室の大学院生が、優秀奨励賞を受賞しました

2021年11月27日(土)にオンラインにて開催された「第60回 日本栄養・食糧学会 近畿支部大会」において、動物機能学研究室所属の大学院生 豊岡真悠さんが若手奨励賞を受賞しました。下記のとおり報告いたします。

なお、本大会における選考対象演題は17題であり、その中から4名が受賞しました。

 

受賞者

豊岡 真悠(京都府立大学大学院 生命環境科学研究科 博士前期課程1年)

 

受賞題目

「香辛料成分のTRPA1発現求心性迷走神経サブクラスを介した摂食亢進作用と中枢神経機序の解析」

 

関連Webサイト(日本栄養·食糧学会 近畿支部 website)

http://www.jsnfs-kinki.jp/

http://www.jsnfs-kinki.jp/taikai/wakate-shoureishou.shtml

 

2021.10.27 分子栄養学研究室 学生の「優秀ポスター賞」の受賞について

本学生命環境科学研究科 分子栄養学研究室の大学院生が、令和3年(2021)年10月24日(日)にオンラインにおいて開催された日本アミノ酸学会 第15回学術大会において優秀ポスター賞を受賞しましたので、下記のとおり報告いたします。

なお、本大会における優秀ポスター賞選考講演は22題であり、その中から3名が受賞しました。

 

 

1 受賞者

大藪(おおやぶ) 葵(まもる)(生命環境科学研究科 大学院2回生)

 

2 受賞題目

「転写因子FOXO1はC/EBPδやATF4の発現増加を介して絶食時の転写プログラムを調節する」

 

3 受賞年月日

令和3年(2021)年10月24日(日)

 

 

(参考)学会HP:http://www.jsaas.org

大会HP:https://15th-jass2021.com

2021.10.07 多様な梅品種の果実特性を調査(果樹園芸学研究室)

梅は日本や中国を中心として古来から利用されてきた果樹です.
花や果実の形態・品質は多様性に富んでおり、観賞用の花ウメや果実を利用する実ウメなど、いくつかの品種グループが存在しています.
形質の多様性は育種親の選定などを行う上での必須情報ですが、多数の品種を対象とした形質調査は手つかずでした.

本学科の森本拓也講師(果樹園芸学研究室)と板井章浩教授(資源植物学研究室)らの研究チームは、多様なウメ品種を用いて有機酸、果実の香りといった重要形質を調査し、遺伝背景や品種間での多様性を明らかとにしました.香りが優れる新品種の育成などへの利用が期待されます.

<論文情報>
Phenotypic Diversity of Organic Acids, Sugars and Volatile Compounds Associated with Subpopulations in Japanese Apricot (Prunus mume) Cultivars,
Takuya Morimoto, Yuya Murai, Rio Yamauchi, Yuto Kitamura, Koji Numaguchi, Akihiro Itai, https://www.jstage.jst.go.jp/article/hortj/advpub/0/advpub_UTD-301/_article/-char/ja

2021.10.04 生命環境科学研究科(分子栄養学研究室)学生の 「優秀発表賞」の受賞について

本学生命環境科学研究科 分子栄養学研究室の大学院生が、令和3年(2021)年9月24(金)〜9月25日(土)にオンラインにおいて開催された2021年度日本農芸化学会 西日本・中四国・関西合同大会において優秀発表賞を受賞しましたので、下記のとおり報告いたします。

なお、本大会における優秀発表賞の選考講演は全142演題中63題であり、その中から17名(修士の部:13名)が受賞しました。

 

 

1 受賞者

大藪(おおやぶ) 葵(まもる)(生命環境科学研究科 大学院2回生)

 

2 受賞題目

「骨格筋における転写因子FOXO1の標的遺伝子の同定とFOXO1とユビキチン-プロテアソーム系を繋ぐ因子の解析」

 

3 受賞年月日

令和3年(2021)年9月25日(土)

 

 

(参考)学会HP:https://www.jsbba.or.jp

受賞者一覧:http://nishinihon.jsbba.or.jp/presentation/20210926.html

2021.09.06 コムギの主要な種子貯蔵タンパク質の一つであるa-グリアジン遺伝子座の詳細な構造と品種間多様性を明らかにしました(植物育種学研究室)

コメやトウモロコシにはないコムギの特徴の一つは、グルテンができることです。これにより、パンやうどんなどに加工することができます。グルテンは単一の物質ではなく、グリアジンとグルテニンが重合したものです。そして、グリアジンやグルテニンはゲノム中に複数の遺伝子が重複して存在していることが知られています。

植物育種学研究室の半田裕一教授らの研究グループは、昨年11月に自らが解読した世界のコムギ15品種の高精度ゲノム情報(Nature 588, 277–283, 2020)を利用してコムギのグリアジンの一つであるa-グリアジンをコードする遺伝子座の詳細な構造解析と品種間比較を行い、品種間で遺伝子コピー数に大きな違いがあること明らかにしました。このデータは、今後、コムギの品質改良に大きく役立つものと期待されます。

この研究は、スイス・チューリッヒ大学、農研機構等との共同研究で、2021年9月3日にFrontiers in Plant Scienceに掲載されました。

書誌事項

Gwyneth Halstead-Nussloch , Tsuyoshi Tanaka , Dario Copetti, Timothy Paape , Fuminori Kobayashi, Masaomi Hatakeyama , Hiroyuki Kanamori , Jianzhong Wu , Martin Mascher , Kanako Kawaura , Kentaro K. Shimizu and Hirokazu Handa (2021) Multiple Wheat Genomes Reveal Novel Gli-2 Sublocus Location and Variation of Celiac Disease Epitopes in Duplicated α-Gliadin Genes. Frontiers in Plant Science, 12: 715985.

論文リンク

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpls.2021.715985/full

2021.08.24 日本進化学会の大会にて,大学院生が昆虫の種分化をテーマとした発表で受賞しました

2021年8月18-21日に開催された「日本進化学会第23回東京大会@オンライン」において、応用昆虫学専門種目の大学院生,田中康湧さんが学生発表小の優秀賞(学部・修士学生部門)を受賞しました. 受賞者:田中 康湧(京都府立大学 大学院生命環境科学研究科 博士前期課程2回生) 受賞題目:Inferring the accumulation process of species properties and isolation barriers in the course of speciation(種分化過程における各分類形質と隔離障壁の蓄積プロセス) 関連Webサイト(日本進化学会2021年学会賞受賞者一覧) http://sesj.kenkyuukai.jp/special/index.asp?id=35546

2021.07.07 生命環境学部(分子栄養学研究室)学部生の「学生優秀発表賞」の受賞について

 本学生命環境科学研究科 分子栄養学研究室の学部生が、令和3年(2021)年7月3日(土)~4日(日)にオンライン開催された第75回日本栄養・食糧学会大会(公益社団法人日本栄養・食糧学会主催)において学生優秀発表賞を受賞しましたので、下記のとおり報告いたします。

 新型コロナウイルスの蔓延による影響により、事前に提出したポスター・発表動画に加え、令和3年(2021)年7月4日(日)に実施された同審査会による質疑応答を経た審査の結果、受賞が決定されました。


1 受賞者
山本(やまもと) 有紗(ありさ)(生命環境学部 農学生命科学科 学部4年生)

2 受賞題目
「転写因子FOXO1の転写活性抑制による筋萎縮抑制効果が期待される植物・食品由来化合物の探索」

3 受賞年月日
  令和3年(2021)年7月4日(日)




(参考)日本栄養・食糧学会は、栄養科学並びに食糧科学に関する学理及び応用の研究についての発表、知識の交換、情報の提供を行うことにより、栄養科学、食糧科学の進歩普及を図り、わが国における学術の発展と国民の健康増進に寄与することを目的に、1947年に設立。


2021.07.01 翅二型性をもつ昆虫に、幼虫期の高密度が短翅成虫の出現率を上昇させる種が複数ある(応用昆虫学)

昆虫の「翅二型性」の典型は、同種同性個体に非移動型(無翅・短翅型)と飛翔移動型(長翅型)との、2つの不連続な表現型を発現する性質です。植食性昆虫の高密度での生息は、植物資源の枯渇や悪化、ならびに天敵の集中などをもたらします。そのため翅二型性昆虫においては、一般的に、高密度は飛翔移動型(長翅型)の出現率を増加させる条件であると考えられていました。雌成虫は不適な条件から飛翔離脱して、より好適な場所へ移動して繁殖することが適応的だと理解できるからです。 応用昆虫学研究室大学院生の近森ちさこ(前期課程修了)と中尾史郎教授は、植物病原ウイルスを伝搬する外来昆虫の1種である翅二型性のアザミウマ(ウスグロアザミウマFrankliniella fusca)において、幼虫期の高密度での発育が雌成虫の短翅型出現率増加に帰着することを発見しました。この翅型構成比率の変動は定説と逆の反応ですが、アザミウマ科昆虫で2属めの発見となり、これが「特殊な例外」でないことを示しました。 本種は北米の主要農業害虫で、貯蔵球根や輸出用植物体で発見されています。しかし、日本国内の野外での農業被害は侵入から約20年経っても顕在化していません。その理由の1つとして、この翅型発現性・密度依存的反応が疑われます。 昆虫が飛翔能力を発揮するか温存するかという分散多型の進化メカニズムを追究し、昆虫に普遍な、そしてアザミウマ科農業害虫に特有な翅型決定(表現型可塑性の制御)機構を解明することが今後期待されます。生息密度がどのような刺激として受容され、どういった神経・ホルモン作用を介して飛翔器官の減退や発達に結びつくかを理解することは、昆虫の飛翔移動による農業被害面積の拡大を防止する手法の開発につながります。   論文タイトル: Crowding leads to higher incidence of brachypterous females in the tobacco thrips, Frankliniella fusca (Hinds) (Thysanoptera: Thripidae). Journal of Asia-Pacific Entomology 24 (2021年). (関連サイト)https://doi.org/10.1016/j.aspen.2021.01.015

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