農学生命科学科

研究成果 

2020.05.14 チャの被覆栽培に関する論文が発表されました

京都府特産の宇治茶の栽培では、茶摘み前に茶樹を遮光する被覆栽培という手法により、玉露やてん茶(抹茶の原料)などの高級茶を生産しています。しかし被覆栽培をした茶は、収穫時に被覆を外した際に、急激な強光にさらされてストレスを受けます。 遺伝子工学研究室の森田重人准教授は、本学生命分子化学科の佐野智講師、京都府農林水産技術センター農林センター茶業研究所と共同で、被覆栽培したチャが受けるストレスについて調査を行いました。その結果、チャは強光にさらされると一時的にダメージを受けますが、その後1〜2週間で回復することが明らかとなりました。 この研究成果は、学術誌Plantsに掲載されています。また本研究は、京都府立大学地域貢献型特別研究(ACTR)の一環として行いました。 論文タイトル: Stress Responses of Shade-Treated Tea Leaves to High Light Exposure after Removal of Shading 論文URL: https://doi.org/10.3390/plants9030302

2020.03.30 京都府RDL絶滅寸前種:オヨギカタビロアメンボが休眠卵で越冬することを、カタビロアメンボ科の種として世界で初めて実証しました

環境省レッドデータブックで準絶滅危惧種に選定されており、京都府では舞鶴市のみで生息地が知られている日本固有種、オヨギカタビロアメンボの発生生態を解明した学部生の研究成果が、日本半翅類学会誌Rostria 64巻に公表されました:「Overwintering and egg diapause of the semi-aquatic bug Xiphovelia japonica (Hemiptera: Veliidae) in western Japan.Rostria (64): 1-15【ISSN 0910-6839】」。 カタビロアメンボ科に卵休眠する種のあることを、 世界で初めて実験的に明らかにした論文です。温帯に分布するアメンボ類の大部分は成虫の状態で越冬します。この発見は田植え時期の変化など、稲作体系や溜池環境の変化が個体群存続に強く影響することを示唆しています。 https://www.pref.kyoto.jp/kankyo/rdb/bio/db/ins0453.html http://jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=07150220780

2020.03.23 資源植物学研究室の研究が学術誌「Journal of Agricultural and Food Chemistry」に掲載されました

ナシ果実のリグニン構造の解析に関する資源植物学研究室の研究が、アメリカ化学会の学術誌「Journal of Agricultural and Food Chemistry」に掲載されました Analysis of Fruit Lignin Content, Composition, and Linkage Types in Pear Cultivars and Related Species Lumin Zhang, Hiroshi Kamitakahara, Hideki Murayama, Takanori Ohsako and Akihiro Itai*
  1. Agric. Food Chem.2020, 68, 8, 2493-2505
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jafc.9b07396   ナシ果実は,ざらざらとした食感がありますが、それは石細胞といわれる組織があるためです。これは近縁のリンゴには存在しません。石細胞にはリグニンが豊富に含まれており、食感を左右するともに食物繊維として機能します。 資源植物学研究室の大学院生章 魯閩氏と板井章浩教授らは、ニホンナシ、チュウゴクナシ、セイヨウナシ遺伝資源の果実のリグニン含量、組成、化学構造を解析し、非常に大きな多様性がみられることを明からにし、それと肉質との関連について考察しました。 本研究の成果は、今後食感および機能性を改善したナシ育種への応用が期待されます。

2020.02.27 京都府城陽市の特産梅「城州白」の普及に向けた取り組みが月刊京都に掲載されました

京都府城陽市で生産されている梅の品種「城州白」は果実が大きく、桃のような甘い香りが特徴です. 本学科の森本拓也助教(果樹園芸学)は京都府農業改良普及センターおよび城陽市と連携し、「城州白」の生産や需要拡大を目的した研究を行っています. その取り組みの一部が月刊京都2月号「食材の舞台裏」に紹介されました. 今後も引き続いて京都の特産果物に関する研究に取り組んでいきます.

2019.12.27 岩崎有作教授(動物機能学)が安藤百福賞(発明発見奨励賞)を受賞しました

この度、本学生命環境科学研究科 教授 岩﨑有作が第24回安藤百福賞「発明発見奨励賞」を受賞しましたので、お知らせいたします。ゼロカロリー甘味料D-アルロースの満腹感誘導、肥満・糖尿病改善作用を発見したことが評価されたものです。 今後、アルロースのヒトに対する満腹感誘導作用、及び過食・肥満・糖尿病の予防/改善作用を明らかにすることで、ゼロカロリー甘味料としてだけなく、カロリーなしで満腹感を誘導する今までに例のない新規機能性食品としての開発が期待されます。加えて、本研究のアルロースの作用経路解明により、消化管ホルモン分泌や内臓感覚神経活性化を誘導することで脳・全身機能を調整する新規摂食抑制剤/機能性食品の開発も期待されます。   プレスリリース原稿はこちら ホームページはこちら

2019.12.11 リンゴとナシの異種交雑に関する論文が発表されました

植物は種のゲノムを維持するためにさまざまな生殖障壁を発達させています。 そのメカニズム解明は種の成立過程を解明するための鍵となるだけでなく、種の障壁を打破することで新しい作物種を創出する可能性を秘めています。 本学科の森本拓也助教と板井章浩教授らのグループは、バラ科果樹に属するリンゴとナシの交雑(不)親和性を明らかとし、交雑障壁を制御するゲノム領域を同定しました。 本研究成果を基盤して、種を超えた交雑によって、新しい果樹の育成が可能になると期待されます。 研究成果は「Tree Genetics and Genomes」誌に掲載されています. 論文タイトル:Genetic mapping of a locus controlling the intergeneric hybridization barrier between apple and pear 論文リンクはこちら

2019.11.26 京都在来聚楽ブドウ復活に向けた取り組みが朝日新聞(京都版)で紹介されました

京都在来聚楽ブドウ復活に向けた取り組みが、朝日新聞(京都版)で紹介されました。

 

板井教授(資源植物学)らのグループの聚楽ブドウ復活に向けた取り組みが紹介されました。

京都市内で100年生に近いブドウ樹が発見され、このブドウは、京都において安土桃山時代から

栽培の記録があり、昭和になって絶滅した‘聚楽’ブドウの子孫の可能があります。

この‘聚楽’を使って,京都ブランドの新品種育成などの取り組みを行っています。

 

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2019.10.28 虫こぶの遺伝子発現解析に関する論文が発表されました

虫こぶは、虫こぶ形成昆虫が植物に作る、食糧と住まいを兼ねた特殊な組織です。植物が通常作る葉や花、果実とは全く異なる形態になることから、虫こぶ形成昆虫が植物の発生システムをハイジャックして、自分に都合の良い組織を作り上げていると考えられますが、その分子メカニズムはよく分かっていませんでした。
 京都府立大学と京都産業大学の共同研究チームは、種類の異なる4つの植物の虫こぶ(カンコノキハフクレフシ、ヒサカキハフクレフシ、ヨモギハエボシフシ、ヌルデミミフシ)で発現する遺伝子を網羅的に比較することで、虫こぶ形成に関わる遺伝子の同定を行いました。その結果、4つの虫こぶでは共通して光合成関連遺伝子の発現が下がり、代わりに器官発生に関わる遺伝子や、細胞分裂・植物ホルモン応答・リグニン化などに関わる遺伝子が高発現することが明らかになりました。虫こぶ形成昆虫は、植物側の遺伝子発現制御を大胆に変更しながら、虫こぶを形成していくことが示唆されました。この研究成果は、PLOS ONEで公開されています。
 今回の結果から、異なる植物種の虫こぶで、共通した発生メカニズムがあることが示唆されました。さらに研究を深めることで、虫にならった植物組織の改変技術に繋がる可能性があります。

カンコノキの葉にできる虫こぶ

2019.09.20 動物機能学研究室の研究が学術誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に掲載されました

動物機能学研究室の研究が学術誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に掲載されました。 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006291X19317607   薬剤として血中投与したオキシトシンは、 血液脳関門をほとんど通過できないのに、なぜ脳内投与と同様の効果を発揮するのか?   肥満・自閉症・糖尿病改善の作用経路の解明:末梢投与オキシトシンは内臓感覚神経を介して中枢オキシトシン神経細胞を活性化し摂食を抑制する   脳内で摂食行動、社会行動、糖代謝、生殖を制御する神経ペプチドのオキシトシンは、血中投与しても脳へほとんど到達できないことがわかっています。しかし、実際には、皮下注射や点鼻投与でも、過食・肥満・自閉症・糖尿病の改善効果を発揮するため、その作用経路解明が待たれていました。 今回、関西電力医学研究所統合生理学センター長の矢田俊彦、及び京都府立大学生命環境学部教授の岩﨑有作らのチームは、 ①末梢(腹腔内)投与オキシトシンが中枢オキシトシン神経を活性化することを発見、 ②末梢中枢オキシトシン連関には、内臓感覚神経の1種である求心性迷走神経を介した神経伝達が必須であることを発見、 ③本経路の活性化が摂食抑制と連関することを解明 しました。   本研究は、末梢オキシトシン投与を用いた治療の作用機序を明らかとし、さらに、脳内のオキシトシン神経を活性化させる手法として「求心性迷走神経の活性化」が有効であることを示しました。今後、脳機能改善の新規治療法開発や創薬への応用が期待されます。   本研究成果は、米国学術雑誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に掲載予定、2019916日にArticles in pressとしてオンラインで掲載されました。   プレスリリース原稿

2019.07.18 分子栄養学研究室の研究が学術誌 「Scientific Reports」に掲載されました

京都府立大学 分子栄養学研究室の研究が学術誌「Scientific Reports」に掲載されました ~加齢で衰えた筋肉(サルコペニア)における代謝物の変化を網羅的に解明:予防・改善法に手がかり~ 令和元年7月18日 京都府立大学大学院生命環境科学研究科分子栄養学研究室は、加齢により衰えた筋肉における生体分子(代謝物)の変化を、世界で初めて網羅的に明らかにし、この内容が学術誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」(電子版)に2019年7月18日付けにて掲載されました。 筋肉は運動やエネルギー代謝において重要な役割を果たしています。筋肉は健康的に生きる上で重要ですが、加齢に伴ってその重量や機能が低下します。そのような、加齢に伴う筋肉量や機能の低下はサルコペニアと呼ばれ、寝たきりや車いす生活の原因となり、高齢者の生活の質の低下をもたらします。そのため超高齢社会を迎えているわが国において、高齢者のサルコペニアの予防・治療は健康寿命延伸の観点から重要な課題の一つです。 本研究では、筋肉中の代謝物が加齢に伴ってどのように変化しているのかを調べました。サルコペニアを引き起こした老齢マウスの筋肉を用いて、数百種類の代謝物を一度に測定することのできるメタボローム解析をしました。その結果、瞬発力があり糖質を主なエネルギー源として利用する「白筋(速筋)」が加齢とともに萎縮し、糖代謝物が減少することがわかりました。また、ポリアミン(タンパク質の合成を活発にする生体分子)が、加齢した筋肉で減少することがわかりました。ポリアミンの減少は筋萎縮の原因の可能性があります。一方で、神経から筋肉へ情報を伝達する神経伝達物質の量が加齢とともに亢進しました。老化による筋・神経損傷による痛みの原因である可能性があります。 本研究で得られた老化した筋肉における代謝物変化のデータは、サルコペニアの予防・治療法の開発に繋がることが期待されます。 プレスリリース Scientific Reports 190718

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