農学生命科学科

研究成果

2024.10.15【府大内共同研究成果】血糖値に上がりにくい「もち米品種」を発見(動物機能学)

“和食”に欠かせない米(うるち米、もち米)は、食後の血糖値が上昇しやすい食品として捉えられ、これが米の消費量減少に拍車をかけているのかもしれません。米の食後血糖上昇指数(Glycemic Index: GI値)を調べると、うるち米(米飯)は73前後で一定であるのに対し、もち米(おこわや餅)は48-94と幅広く、もち米は必ずしも血糖上昇作用が強いわけではないことが示唆されていました。しかし、もち米のGI値が幅広い理由や原因となるメカニズムについては不明でした。

今回、京都府立大学大学院生命環境科学研究科動物機能学研究室の岩﨑有作教授、大林健人博士大学院生、杉山雄大修士大学院生を中心とするグループは、同研究科遺伝子工学研究室の増村威宏教授、同大学京都和食文化研究センターの佐藤洋一郎特任教授、京都大学の中﨑鉄也教授、岡山大学の西村和紗助教との共同研究で、以下を発見しました。

 

① 3種類のうるち米と7種類のもち米を用いて、もち米の血糖上昇作用が品種間で大きく異なることを発見

② その中でも、もち米品種の「あねこもち」と「羽二重もち」が低い血糖上昇作用を有することを発見

③ あねこもちは、抗肥満・抗糖尿病作用を有する腸ホルモンのグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)を強く分泌することを発見

④ あねこもちによる低い血糖上昇作用には、GLP-1による迷走感覚神経活性化を介したインスリン作用の増強というメカニズムが関与していることを発見

 

本研究は、あねこもちのような一部のもち米品種が、腸GLP-1分泌促進による神経活性化の機序を介して、食後の血糖上昇を抑制することを明らかにしました。言い換えると、品種の違いによって、食後の血糖値が上昇しにくい有益な機能を有するもち米(あねこもち、羽二重もち)が存在することを明らかにしました。

もち米を利用した料理や菓子は日本の食文化や和食に欠かせませんが、血糖上昇能が高いかもしれない不安から、近年では健康を気遣う人々や糖尿病の方から敬遠される傾向にあります。本研究で見出した血糖上昇が緩やかな米品種を利用することで、食後血糖上昇に配慮したもち米・餅料理・餅菓子を楽しむことが可能となり、この科学的根拠が日本の食文化と和食の保護に貢献すると期待されます。

 

本研究成果は、2021年9月27日に日本生理学会の英文機関誌である「The Journal of Physiological Sciences」誌に掲載されました。

 

 

論文名(英語):Anekomochi glutinous rice provides low postprandial glycemic response by enhanced insulin action via GLP-1 release and vagal afferents activation.

論文名(日本語):もち米のあねこもちはGLP-1分泌と求心性迷走神経活性化を介してインスリン作用を増強することで低い血糖上昇作用を示す

著者名(日本語):大林健人、杉山雄大、能美太一、西村和紗、中﨑鉄也、佐藤洋一郎、増村威宏、岩﨑有作

雑誌名:The Journal of Physiological Sciences, 2024 Sep 27;74(1):47 (DOI: 10.1186/s12576-024-00940-5)

URL:https://jps.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12576-024-00940-5

 

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