夏の花として親しまれているトレニアは、可愛らしい姿と育てやすさを兼ね備えた優れた園芸植物です。しかし、花の形や色のバリエーションが少ないため、地味な花という印象を持っておられる方も多いのではないでしょうか。本学科の西島隆明教授(野菜花卉園芸学研究室)らの研究チームでは、動く遺伝子「トランスポゾン」が活性化したトレニア「雀斑(そばかす)」の子孫から、花や葉の形や色が変化した様々な変異体を得て、新品種の育成を目指しています。
今回、「雀斑」の子孫から、明るい赤紫色の新しい花色を示す変異体を見出しましたが、残念なことに花弁が縮れてしまう欠点がありました。しかし、この変異体を、赤紫色の色素であるアントシアニンの生合成が抑制された別の変異体と交雑すると、花弁が赤紫色を保ったまま正常に発達することが明らかになりました。新しい花色が花弁に障害を起こす例は他の花でも知られており、今後、研究成果が花色の育種に広く役立つことが期待されます。
<論文情報>
Nishijima, T., N. Tanikawa, N. Noda, M. Nakayama. 2022. A torenia mutant bearing shrunken reddish-purple flower and its potential for breeding. Hort. J. 91: 104-111.