2021.06.18真核生物のゲノムが新しい遺伝子を獲得する過程の実験的な解明に成功しました (植物ゲノム情報学研究室)
京都府立大学の佐藤壮一郎講師
(植物ゲノム情報学研究室
) らと 摂南大学の小保方教授
(ゲノム生物学研究室
) の研究チームは、シロイヌナズナを用いた
*人工進化実験により、真核生物のゲノムが新しい遺伝子を獲得するとき、その遺伝子の発現
(転写
) がどのように行われるのかを明らかにしました。ゲノムの
DNA配列が遺伝子として働くためには、通常、「コード配列」と呼ばれるタンパク質を作るための塩基配列と、その配列を転写するための「プロモーター配列」と呼ばれる塩基配列が必要です。今回の研究では、細胞外からの
DNAの取り込みなどによって、ゲノムに新たに加わった遺伝子は、プロモーター配列がなくてもコード配列の周囲の特定の位置から転写を始めていることが明らかとなりました。また、このように始められた転写の状態が、次の世代に継承されることもわかってきました。今回の研究から、ゲノムの進化の新しいメカニズムが明らかになりました。
* 人工進化実験
: プロモーター配列を持たないコード配列
(タンパク質を作るための塩基配列
) を、人為的にゲノムに大量に導入し、本来はまれにしか生じない「遺伝子の獲得」を高い頻度で生じさせ、長期的なゲノムの進化を短時間で再現した実験。
本研究成果は、国際学術誌「
Molecular Biology and Evolution」と「
PLOS ONE」に掲載されました。
論文タイトル
: Kozak Sequence Acts as a Negative Regulator for De Novo Transcription Initiation of Newborn Coding Sequences in the Plant Genome.
著者
: Takayuki Hata, Soichirou Satoh, Naoto Takada, Mitsuhiro Matsuo, Junichi Obokata. doi.org/10.1093/molbev/msab069
論文タイトル
: De novo activated transcription of inserted foreign coding sequences is inheritable in the plant genome.
著者
: Takayuki Hata, Naoto Takada, Chihiro Hayakawa, Mei Kazama, Tomohiro Uchikoba, Makoto Tachikawa, Mitsuhiro Matsuo, Soichirou Satoh, Junichi Obokata. doi.org/10.1371/journal.pone.0252674
プレスリリース原稿のリンク
(学外サイト
) : https://www.u-presscenter.jp/article/post-46039.html