DNA二本鎖の切断は活性酸素や放射線などによって生じ、そのままでは遺伝情報の消失や細胞死を引き起こすため、細胞内の修復機構によって絶えず修復されています。また一方で、品種改良の新たな技術として注目されているゲノム編集は、このDNAの切断と修復の反応を応用したものです。このようにDNAの切断・修復は非常に重要な現象ですが、そのメカニズムには、まだまだ未解明の部分が残されています。
植物ゲノム情報学研究室の川口晃平氏(博士課程)と佐藤講師は、弘前大学、摂南大学の研究グループとともに、シロイヌナズナのゲノム上の様々な位置でDNAの切断を一時的に引き起こす方法を開発し、DNAの切断が起こると、切断されたDNAの周辺のヒストンタンパク質に様々な変化が生じることを明らかにしました。ヒストンタンパク質は、遺伝子発現やDNAの複製といった多くのメカニズムにも関わっていることから、今後、DNAの切断・修復と染色体や遺伝子の制御との関わりについて、より解明が進むことが期待されます。
本研究成果は、国際学術誌「Plant and Cell Physiology」に掲載されました。
論文タイトル :
Inducible Expression of the Restriction Enzyme Uncovered Genome-Wide Distribution and Dynamic Behavior of Histones H4K16ac and H2A.Z at DNA Double-Strand Breaks in Arabidopsis
著者 :
Kohei Kawaguchi, Mei Kazama, Takayuki Hata, Mitsuhiro Matsuo, Junichi Obokata, Soichirou Satoh
リンク : https://doi.org/10.1093/pcp/pcad133