2020.11.20節足動物の多様性を把握するための手引書『Measuring Arthropod Biodiversity』が出版されました
生物多様性の保全が叫ばれて久しいですが,そもそも我々は地球上に生息している生物相のごく一部しか把握できていません.よって今後は,これまで以上に効率よく生物の多様性を解明していく,つまり,名も無き生物種を発見し,命名し,その生き様を記録していく,ことが求められます.
本書は,動物界最大の多様性を誇る節足動物を対象に,そもそも野外でどうやって対象の生物種を見つけるのかから始まり,生態情報の記録法や,研究の基盤となる学術標本の作成法と保管法に関してまで,多岐にわたる研究手法を様々な分類群の専門家が執筆しています.
本学からは昆虫学を専門とする大島准教授が17章の『Collecting, Rearing, and Preserving Leaf-Mining Insects』をフランス,ロシアの研究者と共同執筆しており,葉に潜る昆虫である「絵かき虫」の仲間を用いた多様性研究の手法を解説しています.
こうした手法は,従来は研究室ごとの伝統として口頭で受け継がれていくことが多かったのですが,本書籍が出版されたことで,新たな研究者の参入も含めたより迅速で詳細な生物多様性の解明プロジェクトが展開される機運が国際的に高まることが期待されます.
書籍情報
https://www.springer.com/gp/book/9783030532253
タイトル: Measuring Arthropod Biodiversity
編者: Jean Carlos Santos, Geraldo Wilson Fernandes
出版社: Springer International Publishing
eBook ISBN: 978-3-030-53226-0
DOI: 10.1007/978-3-030-53226-0
Hardcover ISBN: 978-3-030-53225-3
ページ数: 600ページ
17章の情報
タイトル: Collecting, Rearing, and Preserving Leaf-Mining Insects
著者: Carlos Lopez-Vaamonde (INRAE, France)
Natalia Kirichenko (Russian Academy of Sciences, Russia)
Issei Ohshima (Kyoto Prefectural University)
ページ: 439-466
なお,本章の内容は下記の研究費で得られた成果を元に執筆されています.
・JSPS 外国人研究者招へい事業 外国人招へい研究者(短期)
・JSPS 二国間交流事業(相手国:フランス)
・科学研究費補助金(No. 04J09250, 08J05555, 26840120, 17H06260)