幼虫が葉の中に潜る「絵かき虫」の仲間は,葉に潜った痕跡がどうしても残ってしまうため,天敵である寄生蜂の仲間がその跡を辿ってやってきてしまいます.絵かき虫も負けじと複雑な潜り方をし,それゆえに進化の過程で「絵」が達者になっていくのですが,鱗翅目昆虫の蛾の一部にはこの潜り跡を平面ではなく3次元的に加工するグループが知られています.
今回、京都府立大学大学院生命環境科学研究科博士前期過程2回生の青山悠さんと大島一正准教授は,この3次元構造の潜り方が寄生蜂からの回避において,特に有効に働いていることを野外調査と室内実験から突き止めました.
カイコの絹糸のように,鱗翅目の幼虫は糸を吐くことが得意ですが,潜っている葉を3次元的に曲げるときにも糸を使います.葉に潜る絵かき虫の生活スタイルは特に鱗翅目で多く見られますが,こうした糸を吐く能力に長けていることが鱗翅目における絵かき虫の多様化を促したのかもしれません.
この研究成果は,日本動物学会が発行する国際誌「Zoological Science」に掲載予定で、正式出版までは Early View の website (http://zdw.zoology.or.jp/EarlyView)にて公開されています。
なお,本研究の一部は科学研究費補助金の助成を受けて行われました。
論文情報
タイトル:Changing leaf geometry provides a refuge for a leaf miner from a parasitoid
著者:Haruka Aoyama* and Issei Ohshima (* 責任著者)
雑誌名:Zoological Science