昆虫学に関する学生の学会発表(ポスター発表2件と口頭発表1件)に対して,賞が授与されました.
・1件目
受賞内容:第66回日本生態学会大会 ポスター賞(優秀賞)(行動/behavior 部門)
受賞者:中林ゆい
所属:生命環境科学研究科 応用生命科学専攻 応用昆虫学専門種目
学年:博士前期課程1回生(受賞時)
受賞題目:寄生蜂はアリ防衛の穴を見抜けるか?:ムラサキシジミを例に
※ 行動/behavior 部門における選考対象のポスター発表49件のうち,3件が優秀賞として表彰されたもの。
(参考)第66回日本生態学会大会 website
http://www.esj.ne.jp/meeting/66/jp/index.html
受賞者一覧
http://www.esj.ne.jp/meeting/66/jp/common/doc/poster_awards.pdf
・2件目
受賞内容:第63回日本応用動物昆虫学会大会 ポスター賞
受賞者:中林ゆい
所属:生命環境科学研究科 応用生命科学専攻 応用昆虫学専門種目
学年:博士前期課程1回生(受賞時)
受賞題目:同種他個体との共存はムラサキシジミの若齢期におけるアリ随伴率を上昇させる
※ 選考対象のポスター発表109件のうち,12件がポスター賞として表彰されたもの。
(参考)第63回日本応用動物昆虫学会大会 website
http://63.odokon.org/program/
・3件目
受賞内容:関西昆虫学研究会2018年度大会 若手発表賞
受賞者:天野泰輔
所属:生命環境科学研究科 応用生命科学専攻 応用昆虫学専門種目
学年:博士前期課程1回生(受賞時)
受賞題目:発現比較による虫こぶ形成因子の探索:ホソガ科3種間での比較
※ 対象口頭発表総数6件のうち1件が若手発表賞として表彰されたもの。
(参考)関西昆虫学研究会 website
https://sites.google.com/site/entsockinki/
塚本教授(動物衛生学)の研究が、京都新聞記事(ウェブ版)に取り上げられました。
https://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20190402000121
活性酸素は、呼吸に伴ってできる副産物で,加齢・癌などに関わる「悪い物質」として広く知られています。光合成の過程でも活性酸素が発生してしまう植物ではさらに深刻で、植物は活性酸素の害から身を守るためにさまざまな抗酸化物質を持ちます。植物にビタミンC が多く含まれているのはそのためだと考えられています。
一方で、植物はこの活性酸素をわざわざ作り、様々な場面で活性酸素を活用しています。京都府立大学の武田征士 准教授、東京理科大学理工学部応用生物科学科の朽津和幸 教授・賀屋秀隆元助教(現 愛媛大学准教授)らの研究グループは、これまでに活性酸素を積極的に生成する酵素タンパク質Rboh が、根毛(根に生える細かい毛)や、花粉管の先端成長の過程で、重要な働きを持つことを明らかにして来ました。モデル植物であるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana) には、Rboh が10 種類あり、上記のようにそのうちいくつかについては機能が明らかになっていましたが,これまで全種類を比較した例はなく,それぞれの活性の違い,機能分担については不明でした。
今回、シロイヌナズナの全種類の酵素タンパク質を網羅的に解析し,同種の酵素であっても多様な性質があり,様々な生命現象に適材適所で機能していることを明らかにしました。この仕組みを利用することで,将来的に生育・生殖効率の高い植物や病気に強い植物を作る一助となると期待されます。この研究成果は,国際学術誌 ”The Plant Journal”(プラントジャーナル)に、12 月20 日に暫定版がオンライン掲載され、2 月14 日に最終版が掲載されました。
論文タイトル:Comparative analyses of ROS-producing enzymatic activity of Arabidopsis NADPH oxidases
著者:Hidetaka Kaya, Seiji Takeda, Masaki J. Kobayashi, Sachie Kimura, Ayako Iizuka, Aya Imai, Haruka
Hishinuma, Tomoko Kawarazaki, Kyoichiro Mori, Yuta Yamamoto, Yuki Murakami, Ayuko Nakauchi, Mitsutomo
Abe, Kazuyuki Kuchitsu
イネ種子胚乳組織には貯蔵タンパク質が合成・蓄積され、その内プロラミンはプロテインボディ・タイプⅠに特異的に集積しています。佐生愛博士(遺伝子工学研究室、現東大医科研)、増村威宏教授(遺伝子工学研究室)のグループは、今回プロテインボディ・タイプⅠへのプロラミンの集積の順番にはプロラミンプロモーターが重要な役割を担っていることを明らかにしました。この成果は、外来タンパク質のイネ種子胚乳への効率的な発現・蓄積に役立つと期待されます。
研究成果は「Plant Biotechnology」誌に掲載されています.
論文タイトル:The localization of rice prolamin species in protein body type I is determined by the temporal control of gene expression of the respective prolamin promoters
リンク:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/plantbiotechnology/35/4/35_18.0918a/_article/-char/en
昆虫は非常に多様なグループですが,餌の食べ方も実に様々です.中には,薄い葉に潜り込んで内部を摂食する「潜葉性昆虫(英語では leaf miner リーフマイナー)」というグループもいます.
今回,大島准教授らの研究グループは,フランスのトゥール・フランソワ=ラブレー大学,国立科学研究センター (CNRS),国立農学研究所 (INRA) との国際共同研究により,ヒサカキに潜る潜葉性昆虫であるヒサカキホソガの幼虫が,単に葉に潜っているだけでなく,自身の餌となる植物組織を能動的に植物に作らせていることを発見しました.
このような特徴は「虫こぶ形成昆虫」でも知られていましたが,今回の発見は潜葉性昆虫の植物操作能に関する新たな知見をもたらすだけでなく,虫こぶ形成昆虫を含めた「昆虫類における植物操作能」の進化を理解する上でも重要な発見といえます.
論文リンク:
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0209485
本研究は,日本側では
JSPS二国間交流事業(フランスとの共同研究)
JSPS科研費 挑戦的研究(開拓)17H06260
京都府立大学 重点戦略研究費
のサポートを受けて行われました.
また,第一著者の大学院生は,京都府立大学とトゥール・フランソワ=ラブレー大学間の国際交流協定によるダブルディグリープログラムのもと,両大学の博士後期課程に在籍して研究を行なっています.
地球規模の温暖化・気候変動が問題となっている中、高温や乾燥などの環境ストレス(=非生物ストレス)に強い農作物を開発することが必要です。現在世界中で多くの研究者が、植物のストレス耐性上昇に取り組んでいます。
この度、本学科・遺伝子工学研究室の森田准教授が分担執筆したイネの非生物ストレス耐性に関する著書が刊行されました。森田が担当した章では、遺伝子導入によるイネのストレス耐性上昇に関する最近の研究をまとめました。
書名 “Advances in Rice Research for Abiotic Stress Tolerance”
(非生物ストレス耐性に関するイネ研究の進展)
章タイトル “Engineering of abiotic stress tolerance by modulating antioxidant defense systems“
(活性酸素防御系の改変による非生物ストレス耐性の上昇)
文献URL
https://doi.org/10.1016/B978-0-12-814332-2.00037-X
Shigeto Morita. (2019) Engineering of abiotic stress tolerance by modulating antioxidant defense systems. In “Advances in Rice Research for Abiotic Stress Tolerance”, (Edited by Mirza Hasanuzzaman, Masayuki Fujita, Jiban Krishna Biswas, Kamrun Nahar), p755-765, Woodhead Publishing
バラ科サクラ属には、モモ、スモモ、アンズ、オウトウ(さくらんぼ)、ウメなど経済的に重要な果樹が多く含まれています。
森本拓也助教(果樹園芸学研究室)および京都大学・和歌山県うめ研究所の共同研究グループは、今回サクラ属果樹の異種間交雑親和性を網羅的に解析し、一部の組合せでは種間雑種を獲得できることを明らかとしました。
種を超えた交雑によって、新しい果樹の育成が可能になると期待されます。
研究成果は「Scientia Horticulturae」誌に掲載されています.
論文タイトル:Characterization of post-mating interspecific cross-compatibility in Prunus (Rosaceae)
リンク:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0304423818308264
花をつける植物の雌しべの先端には、「柱頭乳頭毛」という毛が生えており、受粉の場として重要な役割をもちます。しかし、その毛の環境に対する応答機構は分かっていませんでした。
武田征士准教授(細胞工学研究室)および東北大学・三重大学の共同研究グループは、今回雌しべの柱頭乳頭毛が、周りの湿度に応じて長さが変わることを初めて見出し、この伸長には非生物ストレス(Abiotic stress)に応答するアブシジン酸が関わっていることを示しました。
高湿度下では、花粉が入っている葯の裂開が起こりにくいことが知られています。高湿度下での柱頭乳頭毛の伸長は、受粉のチャンスを上げるために起こっていると考えられます。
研究成果は、日本遺伝学会機関紙「Genes and Genetic Systems」に掲載されます。