単なる動物学の辞書を超えた読み物としても楽しめる一冊が発行されました.最新の知見を,各用語の意味だけでなくその学術的背景にまで掘り下げて詳細に解説しています.大島准教授は,「第3章 動物の進化」の「種分化」を担当しました.
ちょっと定価が高いのが難点ですが,教科書では物足りない,もっと動物を深く知りたい,という高校生や受験生にもお勧めです.すでに店頭にも並んでますので,ぜひ手に取ってご覧ください.きっと大学で挑戦したい研究分野が見つかるはずです!
書籍情報
タイトル:動物学の百科事典
著者:(公社)日本動物学会 編
発行元 丸善出版
出版社 website
https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b302768.html
目次詳細
https://www.maruzen-publishing.co.jp/fixed/files/pdf/302768/index_pdf_302768.pdf
京都府に自生するヒメザゼンソウの保全を目的として、地元住民の方々の協力を得ながら進めてきた形態・遺伝的多様性調査の論文が、Plants誌に掲載されました(武田征士准教授・細胞工学研究室、大迫敬義講師・資源植物学研究室、久保中央教授・細胞工学研究室他の共著論文)。
ヒメザゼンソウは、いくつかの府県で絶滅危惧種に指定されています。ザゼンソウより小さく、親指ほどの大きさの肉穂花序が、仏炎苞と呼ばれる葉に包まれたような、かわいらしい形をしている植物です。ヒメザゼンソウの保全を目的に、地元住民の方々の多大な協力を得ながら調査を進め、論文として発表しました。
掲載雑誌: Plants
論文タイトル:Life cycle and genetic diversity of Symplocarpus nipponicus (Araceae), an endangered species in Japan.
著者: Seiji Takeda, Yusuke Onishi, Yoshio Fukui, Takanori Ohsako, Nakao Kubo
動物機能学 井上講師が参加した健康成人の腸内細菌叢の特徴に関する研究の成果をまとめた論文がJournal of Gastroenterologyに掲載決定しました。
腸内細菌叢(腸内フローラ)が健康や様々な病気に関係していることがわかっています。本研究論文では、20-80代までの幅広い年代の健康成人を対象に腸内細菌叢解析を行い、その特徴や性差、BMIとの関係を報告しました。
本研究は、京都府立医科大学、タカラバイオとの共同研究です。
日本では水生半翅類の3分の1の種が絶滅危惧類に選定されています。本書籍は水生半翅類昆虫の生物学的知見とヒトとのかかわりを概観し、今後の研究や保全の指針となることを目指して編集されています。内容は環境適応、他種との関係、系統地理学、保全事例など多岐にわたります。農家、高校生、大学生、大学院生、そして環境アセスメント、環境教育や保全に関わる人を読者として想定しおり、中尾はその社会的・学術的活動の成果を「ヒメタイコウチの偏在と局在:その景観-群集生態学的アプローチ」の項を、社会人共同研究者とともに担当しました。
食物繊維を多く摂取すると満腹感が強く誘導されます。この満腹感創出には、食物繊維から腸内細菌の発酵によって作られる「短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)」が関与しており、実際に短鎖脂肪酸を実験動物に投与すると摂食量を低下させます。しかし、短鎖脂肪酸がどのようにして食欲中枢(脳)に作用しているか、その作用機序は十分には分かっていませんでした。
今回、京都府立大学大学院生命環境科学研究科 岩﨑有作教授らの研究チームは、短鎖脂肪酸が内臓から脳に情報を伝える「求心性迷走神経」に直接作用し、脳の活性化を介して摂食量を低下させるという、新規作用経路を発見しました(図)。短鎖脂肪酸の体内分解速度はとても速く、脳に到達しにくい物質であります。一方、短鎖脂肪酸の産生と吸収の場である腸・肝門脈には高濃度の短鎖脂肪酸が存在し、腸・肝門脈には多くの求心性迷走神経が分布しています。食物繊維より産生された腸の短鎖脂肪酸は、腸や肝門脈近傍の求心性迷走神経を活性化し、神経情報として遠くの脳に作用して満腹感を創出させていることが、本研究成果より示唆されました。
近年、腸内細菌叢と健康・疾患との関連が次々と明らかとなっていますが、ここにも短鎖脂肪酸の関与が指摘されています。従って、「腸内細菌・短鎖脂肪酸・健康/疾患」連関に、求心性迷走神経からの脳機能が関与している可能性が考えられ、更なる研究が期待されます。加えて、有益な短鎖脂肪酸を腸内で増やし、求心性迷走神経の活性化を介して摂食量を抑制する食品やサプリメントの開発も期待されます。
本研究成果は、アメリカの学術雑誌「The Journal of Nutritional Biochemistry」の2018年7月号(Volume 57)に掲載予定で、電子論文はオンラインにて現在公開されています(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0955286317306630)。加えて、2018年6月9日の京都新聞に本研究成果に関する記事が掲載されました(http://www.kyoto-np.co.jp/local/article/20180608000167)。
本研究は、京都府立大学(岩崎有作教授)、関西電力医学研究所(矢田俊彦部長)、自治医科大学、株式会社明治との共同研究であり、科学研究費補助金や民間機関(株式会社明治)からの共同研究費等によって行われました。尚、本研究は費用の出資者とは無関係に公正に行われました。
京都新聞記事: http://www.kyoto-np.co.jp/local/article/20180608000167
タイ・タクシン大学との共同研究論文がアクセプトされました。
タイでは、お寺に供えるハスの切り花が大きな市場を作っていますが、収穫後に花弁が黒くなったり、色があせたりする品質維持の問題がありました。この品質を維持するために、エチレン阻害に関する試薬を使い、花もちを良くする技術を開発しました。
ジャーナル:Scientica Horticulturae
タイトル:The combination of EthylBloc Sachet and 2,4-pyridinedicarboxylic acid reduces petal blackening and prolongs vase life of cut flowers of lotus (Nelumbo nucifera Gartn) cvs. Sattabongkot and Saddhabutra.
著者:Nurainee Salaemae, Shigeru Satoh, Wachiraya Imsabai, Seiji Takeda(本学科・細胞工学研究室), Samak Kaewsuksaeng
掲載誌:京都府農林水産技術センター農林センター研究報告「農業分門」第39号
著者:
Yutaka Mimura, Yasuhiro Minamiyama and Nakao Kubo(三村裕•南山泰弘•久保中央)
論文タイトル:
Parentage analysis of pepper cultivar ‘Manganji’ (Capsicum annuum L.) characterized by SSR markers (SSRマーカーを 利用した ‘万願寺とうがらし’ Capsicum annuum L.の親子関係分析)
‘万願寺とうがらし’ は、「万願寺甘とう」とも呼ばれる、舞鶴市生まれの辛味のない大型で肉厚のトウガラシです。”京のブランド産品” にも認定されています。20世紀初めから栽培されてきましたが 来歴ははっきりしていません。こちらの論文では、DNAの繰り返し配列(「SSRマーカー」 ヒトのDNA鑑定にも利用されています)を 用いて、’万願寺とうがらし’、および、同じく “京のブランド産品” である ‘伏見とうがらし’ を 含む6種類のトウガラシを 材料に用いて 類縁関係を 分析しています。
こちらの研究は、京都府の農業試験研究機関である京都府農林水産技術センター 農林センター 園芸部、生物資源研究センター、京都教育大学 と 本学との共同研究として行われたものです。
京都府立大学大学院生命環境科学研究科分子栄養学研究室は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子細胞代謝学分野、九州大学大学院医学研究院病態制御内科学分野、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科硬組織疾患基盤研究センター筋骨格分子生物学研究グループ、熊本大学発生医学研究所多能性幹細胞分野と共同で、高齢者が転倒などで怪我をした時に筋肉の損傷がなかなか治らない仕組みを解明し、この内容が米国で出版されている学術誌「FASEB Journal」でオンライン公開されました。
加齢時、筋萎縮による骨格筋機能低下のために寝たきりや車椅子が必要になるなど、生活の質の低下がもたらされます。超高齢社会を迎えているわが国では骨格筋機能不全の予防戦略の確立は健康寿命延伸の観点から最重要課題のひとつです。
加齢に伴い、転倒などによる筋肉の損傷が治りにくくなることが知られています。そのため、活動量が減って、筋肉量が減ってしまいます。これは若齢時と骨格筋の性質(=体質)が変わるためであると考えられます。加齢によっても若齢時と比べて遺伝子配列自体は変わらないため、遺伝子配列以外の何らかの変化があると予想されます。遺伝子の変化に「DNAメチル化」が知られます。本研究では、高齢者の骨格筋の性質(=体質)が、若齢期からどのように変化するかという新たな視点から、遺伝子改変マウスをモデルとしDNAメチル化変化に着目しました。その結果、高齢者では若齢者と比べて、筋肉の回復に重要な筋サテライト細胞の遺伝子のDNAメチル化変化が起こり、筋損傷の回復力が低下するという新たな実験データを得ました。
本研究は、転倒などにより筋損傷を起こした際に、高齢者では回復が遅くなるため、自立した生活が難しくなる現象について、骨格筋の筋サテライト細胞に着目し、DNAメチル化で説明しました。
転倒からの回復不全により寝たきりになると、介護が必要となり、また認知症になる可能性が増加します。本研究を手がかりとして、寝たきりを予防・改善し、健康寿命を延ばす医薬品や機能性食品の開発につながります。
【研究の概要】
加齢により筋量・筋力が減少するとともに筋損傷からの回復(筋再生)に時間がかかり寝たきりになりやすいことが知られます。本研究は老化による筋再生能低下をDNAメチル化によるエピジェネティクス制御で説明しました。筋損傷からの回復(再生)には筋サテライト細胞(筋幹細胞)が重要な役割を果たします。老齢時に筋サテライト細胞の機能が低下している可能性がありますがその詳細は不明でした。
本研究では、老齢マウスの骨格筋の遺伝子発現を網羅的に解析することにより、老化によりDNAメチル化酵素であるDnmt3aが発現低下することを見出しました。遺伝子改変により若齢マウスの骨格筋でDnmt3aの発現を低下させると、筋損傷後の筋再生が低下することが判明しました。DNAメチル化変化を介してGDF5(Growth Differentiation Factor 5)という遺伝子の発現を増加させ、筋サテライト細胞の形成・筋再生を抑制することが明らかとなりました。
このように本研究では、高齢者の筋機能が低下しやすくなる理由の一端を明らかにしました。
論文タイトル
Reduced Dnmt3a increases Gdf5 expression with suppressed satellite cell differentiation and impaired skeletal muscle regeneration FASEB Journal. 2018.