農学生命科学科

すべての投稿 |2021年3月 

2021.03.20 コムギの桴色を決める遺伝子Rg-B1を単離・同定するとともに、スペルト小麦の起源を明らかに(植物育種学研究室)

コムギの桴(ふ)色とは穂の外観の色のことですが、この桴色を決める遺伝子Rg-B1は、コムギのグルテンの構成要素の一つである低分子量グルテニンサブユニットをコードするGlu-B3遺伝子座の遺伝子型識別のための圃場マーカーとして利用されてきました。   植物育種学研究室の半田裕一教授と4回生の森田匠くんのグループは、サウジアラビア、スイス、アメリカの研究者と共同して、コムギの桴色遺伝子Rg-B1を単離・同定し、その実体はMYB転写因子であることを明らかにしました。 また、その遺伝子解析を通じてオーガニック食品として欧米で人気のあるスペルト小麦の起源を明らかにし、その成果をCommunications Biologyに掲載しました。     論文タイトル: Population genomics and haplotype analysis in spelt and bread wheat identifies a gene regulating glume color Communications Biology 4: 375 (2021). https://www.nature.com/articles/s42003-021-01908-6.pdf 論文リンクはこちら        

2021.03.08 アサガオの花びら(花冠)がまっすぐに伸びる力学的な仕組みを解明(細胞工学研究室)

京都府立大学の武田征士准教授(細胞工学研究室)、奈良先端科学技術大学院大学の津川暁特任助教(植物代謝制御研究室)らの共同研究グループは、江戸時代から知られている変化アサガオのひとつで、花びらが折れ曲がる「台咲(だいざき)」系統を材料に、花びらがまっすぐに伸びる力学的な仕組みを明らかにしました。花器官表面にあるミクロ構造「分泌腺毛」が、器官どうしの摩擦を軽減することで、狭いつぼみの中でも花びらが伸長できることが分かりました。この仕組みを応用し、観賞用の花の形を自在に制御する園芸技術につながる可能性があります。   プレスリリース原稿はこちら     1 野生型(左)と 台咲(右)の花  野生型では花弁がまっすぐ伸長して漏斗状になる。台咲では花弁が2度折れ曲がり、花の中央に筒状の「台」と呼ばれる構造を作る   花びら伸長のメカニズム  野生型(左)では分泌腺毛とそこからの分泌物によってまっすぐ伸びる。台咲(右)では分泌腺毛がなく、花びらに摩擦が生じ、曲がってしまう。   【研究のポイント】 〇 江戸時代(1815年)に記載された変化アサガオのひとつで、花びら(花冠)の筒部分が折れ曲がる「台咲(だいざき)」系統を材料に、花びら伸長のメカニズムを研究しました 〇 花弁とがく片の表面にある分泌腺毛が、花器官どうしの摩擦を軽減することで、狭いつぼみの中で花びら(花冠)がまっすぐに伸長できることが分かりました。 〇 分泌腺毛の役割として、病害虫に対する物理・化学的防御が広く知られていましたが、今回の研究によって「花器官どうしの摩擦の軽減」という力学的機能が初めて示されました 〇 分泌腺毛というミクロ構造が、花びらの形づくりというマクロな過程に重要な役割を果たすことが分かりました。植物表面のミクロ構造を改良することで、花の形を改良できることが示唆されました。   【責任著者コメント】 今回、日本の伝統園芸植物のひとつであるアサガオの研究により、「花弁をまっすぐ伸ばす」という、一見当たり前のような事が、植物の積極的なメカニズムによって制御されることが分かりました。「変化アサガオ」にはまだまだたくさんの種類があり、日本ならではの研究に結びつく宝が埋もれています。国際化・オンラインネットワークにより世界中とつながることのできる今こそ、日本の歴史が蓄積してきた足元の宝に目を向けるのも、とても大事だと考えています。また、新型コロナウイルスで人々の心がすさんでいきがちですが、こういう時こそ、この研究成果によって、花をみて心癒される人が増えるよう、また、皆さんの花(植物)への関心が高まりますよう、心より願っております。 (京都府立大学 武田征士)   【論文情報】 本研究成果は、国際学術誌「Communications Biology」に、令和3年3月5日10時 (GMT)に掲載されます。 論文タイトル:Reduction in organ-organ friction is critical for corolla elongation in morning glory. 著者:Ayaka Shimoki, Satoru Tsugawa, Keiichiro Ohashi, Masahito Toda, Akiteru Maeno, Tomoaki Sakamoto, Seisuke Kimura, Takashi Nobusawa, Mika Nagao, Eiji Nitasaka, Taku Demura, Kiyotaka Okada, Seiji Takeda. doi. 10.1038/s42003-021-01814-x   【研究体制】
  •  京都府立大学大学院生命環境科学研究科 細胞工学研究室
准教授 武田征士          大学院生 下木彩香、大橋恵一郎、戸田真人        学部4回生 長尾実果
  •  奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域 植物代謝制御研究室
教授 出村拓              特任助教 津川暁
  •  国立遺伝学研究所 生物遺伝資源センター 植物育成開発支援部門
技術専門職員 前野哲輝
  •  京都産業大学 生命科学部 産業生命科学科
教授 木村成介            博士研究員 坂本智昭
  •  広島大学大学院統合生命科学研究科 附属植物遺伝子保管実験施設
助教 信澤岳
  •  九州大学大学院理学研究院生物科学部門 植物多様性ゲノム学研究室
准教授 仁田坂英二
  •  龍谷大学 農学部
教授 岡田清孝