活性酸素は、呼吸に伴ってできる副産物で,加齢・癌などに関わる「悪い物質」として広く知られています。光合成の過程でも活性酸素が発生してしまう植物ではさらに深刻で、植物は活性酸素の害から身を守るためにさまざまな抗酸化物質を持ちます。植物にビタミンC が多く含まれているのはそのためだと考えられています。
一方で、植物はこの活性酸素をわざわざ作り、様々な場面で活性酸素を活用しています。京都府立大学の武田征士 准教授、東京理科大学理工学部応用生物科学科の朽津和幸 教授・賀屋秀隆元助教(現 愛媛大学准教授)らの研究グループは、これまでに活性酸素を積極的に生成する酵素タンパク質Rboh が、根毛(根に生える細かい毛)や、花粉管の先端成長の過程で、重要な働きを持つことを明らかにして来ました。モデル植物であるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana) には、Rboh が10 種類あり、上記のようにそのうちいくつかについては機能が明らかになっていましたが,これまで全種類を比較した例はなく,それぞれの活性の違い,機能分担については不明でした。
今回、シロイヌナズナの全種類の酵素タンパク質を網羅的に解析し,同種の酵素であっても多様な性質があり,様々な生命現象に適材適所で機能していることを明らかにしました。この仕組みを利用することで,将来的に生育・生殖効率の高い植物や病気に強い植物を作る一助となると期待されます。この研究成果は,国際学術誌 ”The Plant Journal”(プラントジャーナル)に、12 月20 日に暫定版がオンライン掲載され、2 月14 日に最終版が掲載されました。
論文タイトル:Comparative analyses of ROS-producing enzymatic activity of Arabidopsis NADPH oxidases
著者:Hidetaka Kaya, Seiji Takeda, Masaki J. Kobayashi, Sachie Kimura, Ayako Iizuka, Aya Imai, Haruka
Hishinuma, Tomoko Kawarazaki, Kyoichiro Mori, Yuta Yamamoto, Yuki Murakami, Ayuko Nakauchi, Mitsutomo
Abe, Kazuyuki Kuchitsu