農学生命科学科

研究成果 

2019.02.25 活性酸素を上手に使う植物のしくみについて論文を発表しました

活性酸素は、呼吸に伴ってできる副産物で,加齢・癌などに関わる「悪い物質」として広く知られています。光合成の過程でも活性酸素が発生してしまう植物ではさらに深刻で、植物は活性酸素の害から身を守るためにさまざまな抗酸化物質を持ちます。植物にビタミンC が多く含まれているのはそのためだと考えられています。

一方で、植物はこの活性酸素をわざわざ作り、様々な場面で活性酸素を活用しています。京都府立大学の武田征士 准教授、東京理科大学理工学部応用生物科学科の朽津和幸 教授・賀屋秀隆元助教(現 愛媛大学准教授)らの研究グループは、これまでに活性酸素を積極的に生成する酵素タンパク質Rboh が、根毛(根に生える細かい毛)や、花粉管の先端成長の過程で、重要な働きを持つことを明らかにして来ました。モデル植物であるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana) には、Rboh が10 種類あり、上記のようにそのうちいくつかについては機能が明らかになっていましたが,これまで全種類を比較した例はなく,それぞれの活性の違い,機能分担については不明でした。

今回、シロイヌナズナの全種類の酵素タンパク質を網羅的に解析し,同種の酵素であっても多様な性質があり,様々な生命現象に適材適所で機能していることを明らかにしました。この仕組みを利用することで,将来的に生育・生殖効率の高い植物や病気に強い植物を作る一助となると期待されます。この研究成果は,国際学術誌 ”The Plant Journal”(プラントジャーナル)に、12 月20 日に暫定版がオンライン掲載され、2 月14 日に最終版が掲載されました。

論文タイトル:Comparative analyses of ROS-producing enzymatic activity of Arabidopsis NADPH oxidases
著者:Hidetaka Kaya, Seiji Takeda, Masaki J. Kobayashi, Sachie Kimura, Ayako Iizuka, Aya Imai, Haruka
Hishinuma, Tomoko Kawarazaki, Kyoichiro Mori, Yuta Yamamoto, Yuki Murakami, Ayuko Nakauchi, Mitsutomo
Abe, Kazuyuki Kuchitsu

 

プレスリリース原稿

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2019.01.29 イネ種子貯蔵タンパク質プロラミンに関する論文が掲載されました

イネ種子胚乳組織には貯蔵タンパク質が合成・蓄積され、その内プロラミンはプロテインボディ・タイプⅠに特異的に集積しています。佐生愛博士(遺伝子工学研究室、現東大医科研)、増村威宏教授(遺伝子工学研究室)のグループは、今回プロテインボディ・タイプⅠへのプロラミンの集積の順番にはプロラミンプロモーターが重要な役割を担っていることを明らかにしました。この成果は、外来タンパク質のイネ種子胚乳への効率的な発現・蓄積に役立つと期待されます。

研究成果は「Plant Biotechnology」誌に掲載されています.


論文タイトル:The localization of rice prolamin species in protein body type I is determined by the temporal control of gene expression of the respective prolamin promoters

 

リンク:

https://www.jstage.jst.go.jp/article/plantbiotechnology/35/4/35_18.0918a/_article/-char/en

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2019.01.16 昆虫が植物を操作する能力に関する論文を発表しました

昆虫は非常に多様なグループですが,餌の食べ方も実に様々です.中には,薄い葉に潜り込んで内部を摂食する「潜葉性昆虫(英語では leaf miner リーフマイナー)」というグループもいます.

今回,大島准教授らの研究グループは,フランスのトゥール・フランソワ=ラブレー大学,国立科学研究センター (CNRS),国立農学研究所 (INRA) との国際共同研究により,ヒサカキに潜る潜葉性昆虫であるヒサカキホソガの幼虫が,単に葉に潜っているだけでなく,自身の餌となる植物組織を能動的に植物に作らせていることを発見しました.

このような特徴は「虫こぶ形成昆虫」でも知られていましたが,今回の発見は潜葉性昆虫の植物操作能に関する新たな知見をもたらすだけでなく,虫こぶ形成昆虫を含めた「昆虫類における植物操作能」の進化を理解する上でも重要な発見といえます.

論文リンク:
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0209485

本研究は,日本側では
JSPS二国間交流事業(フランスとの共同研究)
JSPS科研費 挑戦的研究(開拓)17H06260
京都府立大学 重点戦略研究費
のサポートを受けて行われました.

また,第一著者の大学院生は,京都府立大学とトゥール・フランソワ=ラブレー大学間の国際交流協定によるダブルディグリープログラムのもと,両大学の博士後期課程に在籍して研究を行なっています.

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2019.01.15 ストレス耐性イネの開発に関する著書が発行されました

地球規模の温暖化・気候変動が問題となっている中、高温や乾燥などの環境ストレス(=非生物ストレス)に強い農作物を開発することが必要です。現在世界中で多くの研究者が、植物のストレス耐性上昇に取り組んでいます。

この度、本学科・遺伝子工学研究室の森田准教授が分担執筆したイネの非生物ストレス耐性に関する著書が刊行されました。森田が担当した章では、遺伝子導入によるイネのストレス耐性上昇に関する最近の研究をまとめました。

 

書名 “Advances in Rice Research for Abiotic Stress Tolerance”

(非生物ストレス耐性に関するイネ研究の進展)

 

章タイトル “Engineering of abiotic stress tolerance by modulating antioxidant defense systems“

(活性酸素防御系の改変による非生物ストレス耐性の上昇)

 

文献URL

https://doi.org/10.1016/B978-0-12-814332-2.00037-X

 

 

Shigeto Morita. (2019) Engineering of abiotic stress tolerance by modulating antioxidant defense systems. In “Advances in Rice Research for Abiotic Stress Tolerance”, (Edited by Mirza Hasanuzzaman, Masayuki Fujita, Jiban Krishna Biswas, Kamrun Nahar), p755-765, Woodhead Publishing

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2018.12.11 バラ科サクラ属果樹の異種間交雑親和性に関する論文がアクセプトされました

バラ科サクラ属には、モモ、スモモ、アンズ、オウトウ(さくらんぼ)、ウメなど経済的に重要な果樹が多く含まれています。

森本拓也助教(果樹園芸学研究室)および京都大学・和歌山県うめ研究所の共同研究グループは、今回サクラ属果樹の異種間交雑親和性を網羅的に解析し、一部の組合せでは種間雑種を獲得できることを明らかとしました。

種を超えた交雑によって、新しい果樹の育成が可能になると期待されます。

研究成果は「Scientia Horticulturae」誌に掲載されています.
論文タイトル:Characterization of post-mating interspecific cross-compatibility in Prunus (Rosaceae)
リンク:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0304423818308264

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2018.12.11 ニホンナシ果実の糖組成に関するQTL(量的遺伝子座)解析の論文が掲載されました

農研機構果樹茶業部門および板井章浩教授(資源植物学)の共同研究グループは、
ニホンナシの果実のヘキソース(果糖とブドウ糖)含量を制御するQTL領域を同定しました。
美味しい果実育種につながる成果として期待されます。
論文リンク:
https://link.springer.com/content/pdf/10.1007%2Fs11105-018-1106-y.pdf
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2018.11.26 雌しべの毛の伸長と湿度の関係を明らかにした論文がアクセプトされました

花をつける植物の雌しべの先端には、「柱頭乳頭毛」という毛が生えており、受粉の場として重要な役割をもちます。しかし、その毛の環境に対する応答機構は分かっていませんでした。

武田征士准教授(細胞工学研究室)および東北大学・三重大学の共同研究グループは、今回雌しべの柱頭乳頭毛が、周りの湿度に応じて長さが変わることを初めて見出し、この伸長には非生物ストレス(Abiotic stress)に応答するアブシジン酸が関わっていることを示しました。

高湿度下では、花粉が入っている葯の裂開が起こりにくいことが知られています。高湿度下での柱頭乳頭毛の伸長は、受粉のチャンスを上げるために起こっていると考えられます。

研究成果は、日本遺伝学会機関紙「Genes and Genetic Systems」に掲載されます。

 

論文リンク

 

 

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2018.10.30 潜り跡を3次元に:絵かき虫の天敵対策

幼虫が葉の中に潜る「絵かき虫」の仲間は,葉に潜った痕跡がどうしても残ってしまうため,天敵である寄生蜂の仲間がその跡を辿ってやってきてしまいます.絵かき虫も負けじと複雑な潜り方をし,それゆえに進化の過程で「絵」が達者になっていくのですが,鱗翅目昆虫の蛾の一部にはこの潜り跡を平面ではなく3次元的に加工するグループが知られています.

 

 今回、京都府立大学大学院生命環境科学研究科博士前期過程2回生の青山悠さんと大島一正准教授は,この3次元構造の潜り方が寄生蜂からの回避において,特に有効に働いていることを野外調査と室内実験から突き止めました.

 

 カイコの絹糸のように,鱗翅目の幼虫は糸を吐くことが得意ですが,潜っている葉を3次元的に曲げるときにも糸を使います.葉に潜る絵かき虫の生活スタイルは特に鱗翅目で多く見られますが,こうした糸を吐く能力に長けていることが鱗翅目における絵かき虫の多様化を促したのかもしれません.

 

この研究成果は,日本動物学会が発行する国際誌「Zoological Science」に掲載予定で、正式出版までは Early View の website (http://zdw.zoology.or.jp/EarlyView)にて公開されています。

 

なお,本研究の一部は科学研究費補助金の助成を受けて行われました。

 

論文情報

タイトル:Changing leaf geometry provides a refuge for a leaf miner from a parasitoid

著者:Haruka Aoyama* and Issei Ohshima (* 責任著者)

雑誌名:Zoological Science

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2018.10.30 応用昆虫学の大島准教授が分担執筆した『動物学の百科事典』が発行されました

単なる動物学の辞書を超えた読み物としても楽しめる一冊が発行されました.最新の知見を,各用語の意味だけでなくその学術的背景にまで掘り下げて詳細に解説しています.大島准教授は,「第3章 動物の進化」の「種分化」を担当しました.

 

 ちょっと定価が高いのが難点ですが,教科書では物足りない,もっと動物を深く知りたい,という高校生や受験生にもお勧めです.すでに店頭にも並んでますので,ぜひ手に取ってご覧ください.きっと大学で挑戦したい研究分野が見つかるはずです!

 

書籍情報

タイトル:動物学の百科事典

著者:(公社)日本動物学会 編

発行元           丸善出版

出版社 website

https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b302768.html

目次詳細

https://www.maruzen-publishing.co.jp/fixed/files/pdf/302768/index_pdf_302768.pdf

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2018.10.30 ヒメザゼンソウの形態と遺伝的多様性調査の論文がアクセプトされました

京都府に自生するヒメザゼンソウの保全を目的として、地元住民の方々の協力を得ながら進めてきた形態・遺伝的多様性調査の論文が、Plants誌に掲載されました(武田征士准教授・細胞工学研究室、大迫敬義講師・資源植物学研究室、久保中央教授・細胞工学研究室他の共著論文)。

ヒメザゼンソウは、いくつかの府県で絶滅危惧種に指定されています。ザゼンソウより小さく、親指ほどの大きさの肉穂花序が、仏炎苞と呼ばれる葉に包まれたような、かわいらしい形をしている植物です。ヒメザゼンソウの保全を目的に、地元住民の方々の多大な協力を得ながら調査を進め、論文として発表しました。

 

掲載雑誌: Plants

論文タイトル:Life cycle and genetic diversity of Symplocarpus nipponicus (Araceae), an endangered species in Japan. 

著者: Seiji Takeda, Yusuke Onishi, Yoshio Fukui, Takanori Ohsako, Nakao Kubo

 

論文リンク

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