農学生命科学科

研究成果 |2017年11月 

2017.11.22 高齢者が転倒などで怪我をした時に筋肉の損傷がなかなか治らない仕組みを解明し、学術誌「FASEB Journal」に掲載されました

京都府立大学大学院生命環境科学研究科分子栄養学研究室は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子細胞代謝学分野、九州大学大学院医学研究院病態制御内科学分野、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科硬組織疾患基盤研究センター筋骨格分子生物学研究グループ、熊本大学発生医学研究所多能性幹細胞分野と共同で、高齢者が転倒などで怪我をした時に筋肉の損傷がなかなか治らない仕組みを解明し、この内容が米国で出版されている学術誌「FASEB Journal」でオンライン公開されました。

加齢時、筋萎縮による骨格筋機能低下のために寝たきりや車椅子が必要になるなど、生活の質の低下がもたらされます。超高齢社会を迎えているわが国では骨格筋機能不全の予防戦略の確立は健康寿命延伸の観点から最重要課題のひとつです。
加齢に伴い、転倒などによる筋肉の損傷が治りにくくなることが知られています。そのため、活動量が減って、筋肉量が減ってしまいます。これは若齢時と骨格筋の性質(=体質)が変わるためであると考えられます。加齢によっても若齢時と比べて遺伝子配列自体は変わらないため、遺伝子配列以外の何らかの変化があると予想されます。遺伝子の変化に「DNAメチル化」が知られます。本研究では、高齢者の骨格筋の性質(=体質)が、若齢期からどのように変化するかという新たな視点から、遺伝子改変マウスをモデルとしDNAメチル化変化に着目しました。その結果、高齢者では若齢者と比べて、筋肉の回復に重要な筋サテライト細胞の遺伝子のDNAメチル化変化が起こり、筋損傷の回復力が低下するという新たな実験データを得ました。

 本研究は、転倒などにより筋損傷を起こした際に、高齢者では回復が遅くなるため、自立した生活が難しくなる現象について、骨格筋の筋サテライト細胞に着目し、DNAメチル化で説明しました。
転倒からの回復不全により寝たきりになると、介護が必要となり、また認知症になる可能性が増加します。本研究を手がかりとして、寝たきりを予防・改善し、健康寿命を延ばす医薬品や機能性食品の開発につながります。

【研究の概要】
加齢により筋量・筋力が減少するとともに筋損傷からの回復(筋再生)に時間がかかり寝たきりになりやすいことが知られます。本研究は老化による筋再生能低下をDNAメチル化によるエピジェネティクス制御で説明しました。筋損傷からの回復(再生)には筋サテライト細胞(筋幹細胞)が重要な役割を果たします。老齢時に筋サテライト細胞の機能が低下している可能性がありますがその詳細は不明でした。
本研究では、老齢マウスの骨格筋の遺伝子発現を網羅的に解析することにより、老化によりDNAメチル化酵素であるDnmt3aが発現低下することを見出しました。遺伝子改変により若齢マウスの骨格筋でDnmt3aの発現を低下させると、筋損傷後の筋再生が低下することが判明しました。DNAメチル化変化を介してGDF5(Growth Differentiation Factor 5)という遺伝子の発現を増加させ、筋サテライト細胞の形成・筋再生を抑制することが明らかとなりました。
このように本研究では、高齢者の筋機能が低下しやすくなる理由の一端を明らかにしました。

論文タイトル
Reduced Dnmt3a increases Gdf5 expression with suppressed satellite cell differentiation and impaired skeletal muscle regeneration FASEB Journal. 2018.

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2017.11.15 キクのウイロイド病を押さえ込む分子育種の論文が掲載されます

キクのわい化ウイロイド病は、RNA分子だけでウイルスのようにタンパク質の殻をもたないウイロイドが感染することでおきる病気です。キクの切り花生産の生産者にはとても怖い病気で、従来の育種法で抵抗性品種を作ることができていませんでした。この論文ではRNA干渉と呼ばれる機構を引き起こす遺伝子をキクに導入し、ウイロイドに感染しても病気の症状のでないキクを作ったことを報告しています。この研究は名城大学、若和湾エネルギー研究センターとの共同研究の成果であると共に、京都府立大学の「組換え体温室」を活用して得られた成果です。

J. Hort. Sci. Biotech. (on line版)

著者:Hiroki Takino, Misako Furuya, Atsuko Sakuma, Sumiko Yamamoto, Saki Hirano, Masato Tsuro, Tatsuya Yanagimoto, Yoshikazu Tanaka, Masanobu Mino

論文タイトル: The siRNAs targeting the left or right terminal region of chrysanthemum stunt viroid (CSVd) sequence suppress the development of disease symptoms caused by CSVd infection of chrysanthemum, but do not suppress viroid propagation

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2017.11.15 タバコ属種間雑種の雑種致死に関する論文が掲載されました

縁のとおい植物間の雑種(種属間雑種)を作ることは植物の品種改良に重要ですが、生殖隔離とよばれる現象により、せっかくできた雑種が死ぬことがあります。その原因は両親の特定の遺伝子が雑種で組み合わさることによるのですが、雑種が実際に死ぬ生化学的・生理学的機構はよく分かっていませんでした。この論文では、細胞の中でできる活性酸素種や一酸化窒素の量、とくにその量比が雑種細胞の生死を決定することを明らかにしました。植物育種学研究室では、これらの情報と別に調査している遺伝子やタンパク質の情報をもとに雑種致死をおこさない両親種の改良を目指しています。

J. Plant Physiol. 210 (2017) 72-83

著者:Takumi Yamamoto, Sachiko Shomura, Masanobu Mino

タイトル:Cell physiology of mortality and immortality in a Nicotiana interspecific F1 hybrid complies with the quantitative balance between reactive oxygen and nitric oxide

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2017.11.08 紫外線UV-B照射による施設作物害虫の防除に関する研究成果が月刊誌「植物防疫」11月号に掲載されました

パナソニック(株)との共同研究の成果が日本植物防疫協会の月刊誌「植物防疫」の2017年11月号に掲載されました。

“「紫外線UV-Bの夜間照射による施設害虫アザミウマ類の防除の可能性」
著者名:中尾 史郎、銭 成晨、山田 真、青木 慎一
雑誌名:「植物防疫」71巻11号:718-722

薬剤抵抗性の発達で防除が困難になっている主要な農業害虫アザミウマ類の幼虫と蛹が、暗期にUV-Bを照射されると、致死及び奇形が観察できることを確認しました。害虫防除技術としての実用の可能性について、ハダニ類に対する密度抑制効果と合わせて論じています。日本応用動物昆虫学会誌60巻(179-188頁)(2016年)に掲載になった研究成果が注目され、研究背景や新たな調査結果も網羅して広く一般に普及することを目的として編集されたものです。”

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