農学生命科学科

研究成果

2021.06.11胃腸伸展刺激による有益作用とその作用機序を解明(動物機能学)

胃腸伸展は、腸ホルモンGLP-1の分泌促進と、内臓感覚神経を介した脳作用によって、食べ過ぎ・ダラダラ食い・食後高血糖・肥満を改善する

 

肥満は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病発症の主たる原因となります。肥満の予防・治療のための食事法として、サラダなどのボリュームがあり低カロリーな食品から食べ始める方法が推奨されています。この機序として、胃腸の伸展が満腹感を誘導するという先行研究がありますが、その詳細なメカニズムは概ね不明でした。胃腸伸展の生理機能解析研究が立ち遅れていた理由の1つに、実験的に胃腸を伸展させる方法に問題がありました。これまでの胃腸伸展法としては、外科手術を用いて胃腸内に風船等を入れる方法が一般的で、これら外科手術がその後の生理的な行動解析(食行動や糖代謝解析)に制限をかけていました。

今回、京都府立大学大学院生命環境科学研究科の岩﨑有作教授と大学院生の大林健人らのチームは、関西電力医学研究所矢田俊彦部長、大正製薬株式会社との共同研究で、胃の酸性条件下でゲル状の気泡を形成する「ペクチン含有炭酸水」を用いて胃腸を伸展させ、胃腸伸展による満腹感誘導作用とインスリン作用の増強による食後高血糖改善作用を、マウスを用いた実験によって明らかにしました [概要図]2010年から我が国で新しく利用されている糖尿病治療薬のGLP-1受容体作動薬は、腸ホルモンGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)を鋳型とした製剤です。今回発見した胃腸伸展による生理作用のメカニズムに、胃腸伸展によるGLP-1分泌の促進が大きく関与していることが分かりました [概要図]。さらに、GLP-1が内臓感覚神経(求心性迷走神経)を介して脳神経系に作用することも重要でありました。満腹感を誘導するペクチン含有炭酸水を、肥満マウスへ毎日与えると、ダラダラ食い(摂食リズム異常)を是正し、肥満を改善しました [概要図]

本成果は、胃腸伸展刺激が肥満や糖尿病治療に有効であること、さらに、その作用メカニズムの一端を明らかとしました。本作用メカニズムを応用した新たな肥満・糖尿病の予防・治療法(機能性食品、薬)の開発が今後期待されます。

本研究成果は、202168日にスイスのオンライン学術雑誌「Frontiers in Endocrinology」誌に掲載されました。

 

 

著者:Kento Ohbayashi, Yukiko Oyama, Chiharu Yamaguchi, Toshiki Asano, Toshihiko Yada, Yusaku Iwasaki

論文名:Gastrointestinal distension by pectin-containing carbonated solution suppresses food intake and enhances glucose tolerance via GLP-1 secretion and vagal afferent activation.

雑誌:Frontiers in Endocrinology, 12:6768695 (2021)

URL:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fendo.2021.676869/full

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