農学生命科学科

研究成果 |2021年6月 

2021.06.28 コムギのフロリゲンの一つであるVRN-A3遺伝子の変異とその多様性に関する論文がPlantaに掲載されました(植物育種学研究室)

出穂制御はコムギを含め、多くの作物に共通する重要な農業形質の一つです。出穂に関わる遺伝子は多数ありますが、中でもフロリゲンとして知られるFT遺伝子は重要な役割を果たしています。

 

植物育種学研究室の半田裕一教授らの研究グループは、コムギのFT遺伝子の一つであるVRN-A3遺伝子のプロモーター領域で見つけられた欠失挿入変異とその地理的な多様性を明らかにするとともに、出穂性への影響を明らかにしました。今後、出穂制御への応用が期待されます。この研究は、京都大学、神戸大学、横浜市立大学との共同研究で、2021531日にPlantaに掲載されました。

 

書誌事項

Kazusa Nishimura, Hirokazu Handa, Naoki Mori, Kanako Kawaura, Akira Kitajima, Tetsuya Nakazaki (2021) Geographical distribution and adaptive variation of VRN-A3 alleles in worldwide polyploid wheat (Triticum spp.) species collection.  Planta, 253: 132.

 

論文リンク

 

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2021.06.25 果樹の雑種形成を阻害する分子機構の一端を解明(果樹園芸学研究室)

種間交雑は遺伝的多様性を各段に向上させ,種を越えた形質のやり取りを可能にすることから,画期的な新品種を生み出す可能性を秘めています.しかし,種間雑種の作出は様々な種間障壁因子によって阻害されるため,新規雑種の獲得のためには交雑障壁のメカニズム解明が必要となります.

本学科の森本拓也講師(果樹園芸学研究室)と板井章浩教授(資源植物学研究室)らの研究チームは,桃や梅など多くの果樹が含まれるサクラ属植物を対象として,雑種種子の形成が阻害される要因の解析を行いました.本研究の成果は,木本性植物が発達させた種の維持機構に関する知見を提供するだけでなく,新しい特性を持った新規果樹の作出に繋がることが期待されます.

<論文情報>
Takuya Morimoto, Yuto Kitamura, Koji Numaguchi, Akihiro Itai (2021) Characterization of transcriptomic response in ovules derived from inter-subgeneric hybridization in Prunus (Rosaceae) species.

Plant Reproduction. https://doi.org/10.1007/s00497-021-00423-2

「サクラ属の亜属間における雑種胚珠のトランスクリプトーム反応」

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2021.06.18 植物細胞への遺伝子の導入効率を従来に比べて100倍以上向上させる実験方法を開発しました (植物ゲノム情報学研究室)

植物ゲノム情報学研究室 と 摂南大学の小保方教授 (ゲノム生物学研究室) の共同研究の成果が植物細胞工学に関する専門誌 Plant Biotechnology に掲載されました。植物細胞への遺伝子導入は、植物の品種改良や遺伝子機能の解析を行う上で、非常に有用な手法の一つです。遺伝子導入効率の向上は、新たな品種の作成過程における作業の迅速化や、より多くの遺伝子の機能解明につながります。本研究では、アグロバクテリウムという細菌を用いて遺伝子導入を行う際に、シロイヌナズナの細胞を、通常使用するものよりもはるかに高い濃度の培養液 (栄養塩溶液) で短時間培養することで、遺伝子の導入効率が著しく高くなる現象を発見しました。これにより、1回の実験によって得られる形質転換カルス (細胞塊) の数が100倍以上になります。

 

 

論文タイトル : Preculture in an enriched nutrient medium greatly enhances the Agrobacterium-mediated transformation efficiency in Arabidopsis T87 cultured cells.

 

著者 : Takayuki Hata, Kazuki Mukae, Soichrou Satoh, Mitsuhiro Matsuo, Junichi Obokata.

 

 

プレスリリース原稿のリンク (学外サイト) : https://www.u-presscenter.jp/article/post-46058.html

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2021.06.18 真核生物のゲノムが新しい遺伝子を獲得する過程の実験的な解明に成功しました (植物ゲノム情報学研究室)

京都府立大学の佐藤壮一郎講師 (植物ゲノム情報学研究室) らと 摂南大学の小保方教授 (ゲノム生物学研究室) の研究チームは、シロイヌナズナを用いた*人工進化実験により、真核生物のゲノムが新しい遺伝子を獲得するとき、その遺伝子の発現 (転写) がどのように行われるのかを明らかにしました。ゲノムのDNA配列が遺伝子として働くためには、通常、「コード配列」と呼ばれるタンパク質を作るための塩基配列と、その配列を転写するための「プロモーター配列」と呼ばれる塩基配列が必要です。今回の研究では、細胞外からのDNAの取り込みなどによって、ゲノムに新たに加わった遺伝子は、プロモーター配列がなくてもコード配列の周囲の特定の位置から転写を始めていることが明らかとなりました。また、このように始められた転写の状態が、次の世代に継承されることもわかってきました。今回の研究から、ゲノムの進化の新しいメカニズムが明らかになりました。

 

* 人工進化実験 : プロモーター配列を持たないコード配列 (タンパク質を作るための塩基配列) を、人為的にゲノムに大量に導入し、本来はまれにしか生じない「遺伝子の獲得」を高い頻度で生じさせ、長期的なゲノムの進化を短時間で再現した実験。

 

 

本研究成果は、国際学術誌「Molecular Biology and Evolution」と「PLOS ONE」に掲載されました。

 

論文タイトル : Kozak Sequence Acts as a Negative Regulator for De Novo Transcription Initiation of Newborn Coding Sequences in the Plant Genome.

 

著者 : Takayuki Hata, Soichirou Satoh, Naoto Takada, Mitsuhiro Matsuo, Junichi Obokata.   doi.org/10.1093/molbev/msab069

 

 

論文タイトル : De novo activated transcription of inserted foreign coding sequences is inheritable in the plant genome.

 

著者 : Takayuki Hata, Naoto Takada, Chihiro Hayakawa, Mei Kazama, Tomohiro Uchikoba, Makoto Tachikawa, Mitsuhiro Matsuo, Soichirou Satoh, Junichi Obokata.   doi.org/10.1371/journal.pone.0252674

 

 

プレスリリース原稿のリンク(学外サイト) : https://www.u-presscenter.jp/article/post-46039.html

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2021.06.11 胃腸伸展刺激による有益作用とその作用機序を解明(動物機能学)

胃腸伸展は、腸ホルモンGLP-1の分泌促進と、内臓感覚神経を介した脳作用によって、食べ過ぎ・ダラダラ食い・食後高血糖・肥満を改善する

 

肥満は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病発症の主たる原因となります。肥満の予防・治療のための食事法として、サラダなどのボリュームがあり低カロリーな食品から食べ始める方法が推奨されています。この機序として、胃腸の伸展が満腹感を誘導するという先行研究がありますが、その詳細なメカニズムは概ね不明でした。胃腸伸展の生理機能解析研究が立ち遅れていた理由の1つに、実験的に胃腸を伸展させる方法に問題がありました。これまでの胃腸伸展法としては、外科手術を用いて胃腸内に風船等を入れる方法が一般的で、これら外科手術がその後の生理的な行動解析(食行動や糖代謝解析)に制限をかけていました。

今回、京都府立大学大学院生命環境科学研究科の岩﨑有作教授と大学院生の大林健人らのチームは、関西電力医学研究所矢田俊彦部長、大正製薬株式会社との共同研究で、胃の酸性条件下でゲル状の気泡を形成する「ペクチン含有炭酸水」を用いて胃腸を伸展させ、胃腸伸展による満腹感誘導作用とインスリン作用の増強による食後高血糖改善作用を、マウスを用いた実験によって明らかにしました [概要図]2010年から我が国で新しく利用されている糖尿病治療薬のGLP-1受容体作動薬は、腸ホルモンGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)を鋳型とした製剤です。今回発見した胃腸伸展による生理作用のメカニズムに、胃腸伸展によるGLP-1分泌の促進が大きく関与していることが分かりました [概要図]。さらに、GLP-1が内臓感覚神経(求心性迷走神経)を介して脳神経系に作用することも重要でありました。満腹感を誘導するペクチン含有炭酸水を、肥満マウスへ毎日与えると、ダラダラ食い(摂食リズム異常)を是正し、肥満を改善しました [概要図]

本成果は、胃腸伸展刺激が肥満や糖尿病治療に有効であること、さらに、その作用メカニズムの一端を明らかとしました。本作用メカニズムを応用した新たな肥満・糖尿病の予防・治療法(機能性食品、薬)の開発が今後期待されます。

本研究成果は、202168日にスイスのオンライン学術雑誌「Frontiers in Endocrinology」誌に掲載されました。

 

 

著者:Kento Ohbayashi, Yukiko Oyama, Chiharu Yamaguchi, Toshiki Asano, Toshihiko Yada, Yusaku Iwasaki

論文名:Gastrointestinal distension by pectin-containing carbonated solution suppresses food intake and enhances glucose tolerance via GLP-1 secretion and vagal afferent activation.

雑誌:Frontiers in Endocrinology, 12:6768695 (2021)

URL:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fendo.2021.676869/full

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2021.06.11 熊本大学と分子栄養学研究室の共同研究の成果が米国の科学誌Science Advancesに掲載されました

熊本大学と分子栄養学研究室の共同研究の成果が米国の科学誌Science Advancesに掲載されました。
難治性筋疾患である筋ジストロフィーはいくつかの病型があり,脆弱化する筋肉の身体位置は病型によってそれぞれ異なります。また,サルコペニアとよばれる加齢による筋肉の脆弱化も身体位置の特異性があります。しかし,一見同じようにみえる筋肉になぜ位置特異的な症状が出るのかは全く分かっていません。本研究では、骨格筋(筋肉)およびその再生を担う筋幹細胞は,身体位置固有の情報(位置記憶)を保持していることを発見しました。今後は、位置記憶の機能的な側面から筋疾患のメカニズム解明に取り組むとともに,位置記憶を応用した新たな筋再生治療の開発を進めていきます。京都府立大学分子栄養学研究室は、骨格筋の網羅的なDNAメチル化解析を分担しました。

 

論文・プレスリリースへのリンク

https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/seimei/20210610

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2021.06.07 動物機能学研究室の大学院生が、学会で受賞しました

202165日(土)にオンラインにて開催された「日本農芸化学会関西支部第515回講演会」において、動物機能学研究室所属の大学院生 大林健人さんが優秀発表賞(支部長推薦)を受賞しました。下記のとおり報告いたします。

 

受賞者

大林 健人(京都府立大学大学院 生命環境科学研究科 博士前期課程2年)

 

受賞題目

「ペクチン含有炭酸水の胃腸拡張によるGLP-1分泌促進と摂食リズム異常改善作用」

 

関連Webサイト(日本農芸化学会関西支部第515回講演会)

http://kansai.jsbba.or.jp/presentation/2021年度支部講演会/515講演会.html

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